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笑って少女21 ページ29

???。



今思えば、"怖くないの?"という
あの質問は少しずるかった、と少女は笑った。

正体を知るはずもないのに、
ただこの弱虫な少女のことを恐れるか、と
意味のない、浅はかなその問い。

それに、一時も躊躇わずに彼らは言ってくれた。

正体を明かしても、彼らは変わらず
すぐそばに、隣にいて共に笑ってくれた。


置いていったのは私の方だ、と
少女は自嘲気味に笑う。

いつも救ってくれて、先生を助けに行く、
必ず帰ってくる、と約束してくれた彼らは
少女のヒーローだった。

それなら少女の役はなんだったのか。

城でただ助けを待つ姫か、
仲間の危機に駆けつけるニューヒーローか、
家族の無事をただ祈るしかない非力な一般人か、

敵として現れてその道を塞ぐ 裏 切 り 者 か。



急激な意識の上昇を感じて、揺れる脳に
不快感を覚えながらも少女は目を開けた。


(被験体コード302異常無し、
システムオールクリア、レベル3にランクアップ)

「…(最悪だ、)」


薄紫色の液体に沈められ、呼吸器と足枷で
どうやら繋がれているらしいとしか
完全に覚醒していない少女には分からない。

白い人影がいくつも液体の奥を動く気がするが
ぼやけていてよく見えなかった。

手は自由と言えどピクリとも動かせない。

ただ機械の振動だろうか、
液体の中で少女はゆらゆらと揺られていた。


(レベル4にランクアップ)


「……ぅっ」


内臓が、上下左右に揺さぶられる感覚。

堪らず呻き声を漏らせば
暗い底に意識が強制的に沈んでいく不快な感覚。

抵抗する気力も起きず、
少女はあっさりとその意識を手放した。



小さな花畑、少女の秘密の場所で出会った彼は
懲りもせずにその翌日もやって来た。

かかっていた町医者が経営不振で薬に不正を
働き役人に捕らえられたこと、その薬が
昨日姉の手にあったこと、薬の代わりに貰った
花弁を処方していて助かったこと、
その礼をいいに来たこと。

息継ぎもせずに言い切った少年を
思わず笑ってしまったことは許してほしい。

何が可笑しい、と拗ねてしまったので
素直に礼を言えるとは思わなかった、と
正直に述べると恥ずかしかったのか俯く彼。

それからも毎日のように通ってきた。

花畑が色を失い始めた頃、
もう君の望む花は咲かない、と言った少女に
少し背の伸びた彼は手を伸ばして言った。


『花はテメェだ。あんたを迎えに来た』


その真っ直ぐな目に、
少女はもう一度咲くことを決めたのだ。

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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2018年3月2日 23時

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