笑って少女20 ページ28
過去。
『お姉ちゃん!』
『どうしたの、総ちゃん』
それを見つけたのは偶然だった。
町医者からの帰り道、綺麗な花が咲いていると
噂を聞いて、いつもよりも遠回りしていた。
甘栗色の髪をサラサラと風になびかせる少年、
それに微笑みながら返事をするのは姉。
少年_沖田が指をさす先には小さな花畑。
誰かが手入れをしているのか、
その周りは雑草がなく、雨は降っていないのに
色とりどりの花弁は水滴にキラキラと光る。
綺麗ね、と溢した姉に気を良くした沖田が
摘み取って飾ろうと近づいたその時。
『お姉さん、病気なの?』
『っ!?』
その声は沖田の後ろから、姉の方から聞こえた。
振り返った沖田、姉の前に立つ少女。
『な……』
『え、えぇ、病院からの帰りなの』
手に持つ袋、薬を少し取り出して見せる姉。
そうなの、と薬から目を離した少女は
チラリと沖田、ではなく花畑に目をやった。
『その薬は、貴女には合わない。
あの町は小さいけれど医者は他にもいるはず。
治したいなら、他を当たるべき』
『お、お前にお姉ちゃんの何が分かるって』
『分かるよ』
纏う衣はやや汚れ、破れていて、
大きなスリットが白い太股を露にしていた。
背中までの髪は太陽の光を浴びて黄金に輝く。
目を伏せていた少女が、
沖田と初めて目を合わせた。
『君の盗ろうとした花の方が
その薬よりもお姉さんに効果があることも、
医者には適材適所があることも』
真顔で、淡々と言い切った少女は
ゆっくりと沖田に近づいていった。
完全に呑み込まれているのか、その場から
動けない沖田のすぐ横に少女はしゃがみこむ。
『**、***』
『ぇ…』
何か聞こえた気がして、
沖田は首だけを少女に向ける。
『!』
そこには、沖田が手を伸ばしていた一輪の花を
摘み取って、その花弁に触れるだけの
口付けを落とす、美しい少女の横顔。
それも一瞬のことだったが、
沖田が目を奪われるのには十分だった。
『西の町外れ、1軒だけ変わった家がある。
見た目はアレだが、信頼出来る医者。もし、
医者を変えるのなら、会ってこう伝えるといい』
沖田の手に無理矢理その花を握らせ、
立ち上がった少女はそのまま背を向け歩き出す。
森の一歩手前で、足を止めた少女が
悲しげな笑みを浮かべて目を細める。
『
それが、少女との運命の出会い。
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2018年3月2日 23時