笑って少女2 ページ3
真選組。
「おい、いるか?」
角を曲がった先。
机に向かっていたその後ろ姿に
Aが走り寄って抱きつく。
パタパタとした可愛らしい足音に
振り返った三番隊隊長、斎藤終がその体を
優しく受け止めた。
髪を慣れた手つきで鋤いたあと、
部屋に入らず立ったままの土方に目を向ける。
「そいつを頼んだ。後から総悟も来る」
[了解したZ]
「♪」
「いい子にしてろよ」
ポンポン、と雑に頭を撫でられ、
少しだけ寂しそうな顔をしたAに
笑みを残して土方は自分の仕事を片付けに去る。
ぺらり、と静かな部屋に響いた
ノートをめくる音にAが斎藤を振り返った。
[すぐに戻るZ]
「…」
寂しそうに、それでもAは頷いた。
座蒲団を引っ張りだし、
斎藤の後ろまでズルズルと引きずって、
その上にぺたんと座り背中を預ける。
そこはAの定位置。
「……」
「……」
何も喋らない。
これが二人のいつものこと。
居心地がいい沈黙の空間。
サラサラと筆が走る音に、
Aも負けじと紙を折る。
これがAの小さなお仕事。
「?」
「_♪」
[上手に出来てるZ]
トントン、叩かれて背中へ目を向ければ
綺麗な鶴を手にして微笑むA。
誰かほどではないが、
沢山積まれた書類から1枚だけ抜き取り、
Aはこの部屋で折り紙に励む。
受け取り、無駄な折り目のない見事な鶴に
もう一度褒めれば、気をよくしたのか
Aはまた数枚、あちこちから抜き出した。
それを見て斎藤はスッと真剣な目をする。
「(今日はやけに多いZ…)」
「?」
[疲れたらちゃんと休んでほしいZ]
「♪」
コクコクと頷いたA。
抜かれた書類が必ずしも折られるとは
限らないが、それはAが途中でやめたり
その必要がなくなったりする時だけである。
再び背を預けて集中し始めたAに、
斎藤も報告をまとめようと筆を走らせる。
暫く後、気がつけば背後の音は消え、
代わりに背中に重みが増していた。
見なくても分かる。
疲れて眠ってしまったらしい。
起こさぬように慎重に抱え、
座蒲団で作った即席の寝床に横たえ
薄いタオルケットをその体に丁寧にかける。
そこまでしてようやく、
斎藤はAの作品を見た。
鶴に加えて、薔薇が2つ…
「ただいま戻りやした…あり、昼寝中ですかィ」
[お帰りなさいZ]
「終兄さん…それ、Aが?」
一瞬にして真剣な表情をした沖田が、
無防備に眠るAを撫でた。
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2018年3月2日 23時