笑って少女13 ページ19
過去。
『銀時捕まえた!これで最後は小太郎だけ!』
『おや銀時、君も捕まったのですか。
相変わらず鬼は強いですね』
『ふふふっすぐに分かるよ、晋助は特に!』
『てめぇ本当に目瞑ってんのか、』
『今日は目隠しだってつけてるのに文句?
見えなくたって分かるもん!』
真っ白なはちまきを目元に巻いて、
道場の中に限定して始まった鬼ごっこ。
鬼役の少女は奪われている視界を
ものともせず逃げる仲間達に次々触れていく。
楽しそうに笑う少女は黒髪で独特の紫色の目を
不満げに細める高杉に言い返した。
『よしヅラ!捕まえるから出ておいで!』
『ヅラじゃない、桂』
『だあぁっ!』
『ぐ、名乗りの最中とは卑怯だぞ!』
『あんまり走ると風で髪が抜けるよヅラ!』
『む、そうなのか?』
『綺麗に纏めてあげるからこっちおいで』
『そういうことなら致し方ない』
『馬鹿!鬼ごっこで鬼に近づいてどうする!』
『おい銀時、てめぇはなに言われた』
『はぁ!?俺は別に』
『私は将来先生のお嫁さんになりたいと』
『松陽まで何に引っ掛かってんだよ!』
『タッチ!小太郎捕まえた!』
『は、おのれ謀ったな!』
『てめぇも情けねぇなヅラァ』
『何だと、1番に捕まりよったくせに!』
『ふふふ、また勝った!』
いぇい、とピースサインをして
中央で跳ねる少女はキラキラと笑顔を見せる。
しゅるりとはちまきを取って乱れた髪を
手櫛で軽く整え、いつものように口喧嘩を
始めた3人とニコニコと見つめてくる先生に
また眩しいばかりの笑顔を向けた。
『私きっと皆が離れててもすぐに分かるよ。
だから私が、皆を繋いでみせるよ』
ニッコリと笑って、
3人と1人、暖かな光に照らされて
縁側に座る様子にそっと手を翳す。
道場の奥にいる少女の位置は陰、
伸ばした手だけが日に当てられ白くなった。
眩しそうに目を細めた少女の
下ろそうとした手を誰かが取る。
『てめぇもだろ』
『ぎ、んとき?』
『早く来い、鬼の勝ちで終いだ』
『晋助まで珍しい』
『そんな離れた所で遠慮するな』
『遠慮、してないよ小太郎』
竹刀を振らない女のために遊びに付き合って
もらった事を少女はよく理解していた。
優しく、易しく、難易度をあげたようで
わざと捕まえやすくしてくれてることも。
4人の姿が眩しくて、羨ましくて、
心地いいあの空間に少女は要らなかった。
『馬鹿か、てめぇも仲間だろ』
そう言った彼らは、
数年後、少女を置いていった。
30人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2018年3月2日 23時