笑って少女12 ページ18
真選組。
「鍵かかってなかったし」
「…」
「怒ってんのかィ？」
「…」
「からかったことは謝りまさァ」
沖田は可愛らしく頬を膨らませたまま
一向に目を合わせようとしないAの
ご機嫌伺いに、表面上は取り繕いながらも
かなり必死で弁解を繰り返していた。
「………」
普段のニコニコとした笑みは何処へやら、
やや目の周りを赤くしているAは
先ほどから引っ付いて離れない沖田を
小さな両手で押し返して拒否した。
上目遣いに睨まれて、一番隊隊長が威厳もなく、
ドＳ王子が柄にもなく動揺をみせる。
「許してくだせェ、まさか泣くとは」
「ﾍﾟｼｯ」
「っ、…痛くねェんですけど、」
頬をほんのりと赤くして俯いたA。
平手打ちだろう、頬を叩かれた沖田は
その小さな暴力にも思わず頬を緩める。
ここで意地悪をしても、更に目の前の少女が
機嫌を悪くすることは重々分かっていた。
「結局見てねェから許してくだせェよ、
可愛い顔に土方の野郎みてぇな皺がつきやすぜ」
「……」
だが沖田には無理な話だった。
これでも十分手加減しているのだ。
湿度たっぷりのジト目でも、
漸く目を合わせたAに沖田は
落ち込んだ様子で情けない声を出す。
「A、許してくだせェ、」
「……、」
沖田は美形、二枚目、童顔のイケメンである。
赤い瞳が不安げに揺れながら、
やや伸びた前髪からAを見つめている。
大きな、剣を握るゴツゴツとした手が
息を呑んで動けないAの頬を捉える。
長い睫毛がやや伏せられて、
静かに近づいて触れあった鼻先。
沖田が首の角度を変えて、
鼻と鼻がすれ違おうとしたとき、唇が近づいた
その時に、部屋の襖が勢いよくとんだ。
「沖田隊長おおぉぉぉ……し、失礼しまs」
「居直れ山崎ィ、首も飛ばしてやりまさァ」
「ひいぃ…」
「、、」
「ぁ？何でィA」
とんだ襖に驚いてひっくり返りそうになった
Aを素早く支え、片手で愛用の菊一文字を
3�僂个�り抜き光らせ山崎を睨んだ沖田。
袖を引っ張って窘められ、
しょうがない、と刀から手を離し代わりに
Aを両腕に抱え込む。
Aも抵抗せず大人しく収まった。
安堵の息を吐く山崎に目で用件を促す。
「ふ、副長が！」
「ようやくくたばったか」
「縁起でもないこと言わないで下さい！
見廻り中にテロと遭遇、至急の応援要請です！」
暗い顔をしたAが沖田を見上げる。
「待ってろ」
一人残されたAが俯いた。
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作者名：梦夜深伽 | 作成日時：2018年3月2日 23時
