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閑話:バレンタイン3 ページ11

真選組。



バレンタイン当日。

沖田は一人縁側に寝転んでいた。

お気に入りのアイマスクを何度も外しては、
先ほどから気にする空っぽの部屋。

朝食の後から姿が見えないAは
また勝手に外へ遊びに行ったらしい。

本来なら追いかけて探しにいきたいのだが、
沖田にはそうできない理由があった。


「隊長、ここ置いときますからね、
というか自分で貰いに行ってくださいよ!」

「誰もくれなんて言ってねぇよ、
欲しいなら好きなだけ持ってけィ」

「貰えない俺を馬鹿にしてますよね!」


両手いっぱいにチョコを抱えて叫ぶのは
地味に監察を務める山崎退、
聞いてわかる通り、チョコは全て沖田宛のもの。


「外に出る度に渡してくれって他人宛のチョコを
受けとるこっちの身にも」
「好きなもん持ってけって言ってらァ」


沖田は目を閉じる。

山崎はしばらく喚いていたが、諦めたのか
黙って静かに去っていた。

静寂…なら良かったのだが、
今日一日ずっと外は騒がしそうだ。

寝つけなくて、ぐったりと無理やり体を起こし、
柱にもたれ掛かるようにして、座り直す。


待てど暮らせどAは帰ってこない。

時は夕暮れ。

山崎が運んできたチョコは段ボールに積まれて
一部屋を埋め尽くさんとしている。

昨日スナックお登勢へ行って
上機嫌で帰ってきたAは、可愛らしい
エプロンを身に付けていた。

時々女中に混ざって仕事をやりたがるから、
それをよく思わない俺達に遠慮して
自分で買いに行ったのだろうと推測していた。

それが2日連続でいなくなるとは…。


「…(嫌われた…?)」


それはない、と沖田は首を振るが
同時に、とてつもない不安に襲われる。


「(Aにもし、他に男が出来たら…)」


最悪な妄想だ。

現状に苛立ちを覚えて、舌打ちをしたところで
ようやく近づいてくる小さな人影に気づいた。

一連の沖田の様子を見ていたらしいAは
不安そうな表情でアホ毛を揺らしながら_


「…A、まさかチンピラと会ってたのかィ?」

「?…コクコク」

「アイツに近づくなっていつも言ってんだろィ」


何故バレた、なんて顔をしたって遅い。

どうしてか神威と話してくると
アホ毛を移されて帰ってくるAなのだ。


「で、その手に持ってるもんは?」

「♪」

「…まさか、バレンタインチョコを?」

「チュ♪」

「!」


日頃の感謝を、と頬にキスをしたAは
目を丸くする沖田に悪戯に微笑む。

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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2018年3月2日 23時

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