冷たい溺愛カップル【江戸川乱歩】 (ページ37)

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交差世界の迷宮解読6 ページ37

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[戀敵・零]

息が苦しくて目が覚めた。

寝返りも打てず、纏わり付く何かは余計に絡んでくる。

「ん…何、」

異様に膨らんでいる蒲団からはみ出ている癖っ毛。

雨戸を閉め切った部屋は暗い。

目を凝らして睨んだ時計が示す夜明け前。

私より大きい体は頭ひとつずれてきっちり私の上に乗っているらしい。

重い。

「らん、ぽ」

出た肩が寒い。

唯一自由な左手で乱歩の頬をなぞる。

ひんやりと冷たい。

「…」

乱歩の体温で温んでいて気が付かなかったが、寝間着の胸元も濡れている。

「…A？」

掠れた声がして癖っ毛が揺れる。

「乱歩」

如何したの。

左手を強く握られて、痛いけれど声には出さない。

伸びてきた乱歩の手が私の首、顎、頬、目までを這う。

ぴたりと添えられた手を燃えるほど熱く感じるのは私が冷たいからだ。

此処に居るよ。

そっと頬を擦り寄せると漸く乱歩が顔を上げる。

憔悴した翡翠色は私を映してくしゃりと歪み滲む。

「…A、」

「如何したの」

はらはらと滴が溢れていく。

腫れた瞼はもう散々泣いた後だろうに。

「乱歩」

しゃくりあげて肩を震わせる尋常ではない様子。

苦しいぐらいに抱き締められて、嗚咽混じりに吐かれた言葉。

「皆がっ…死んじゃう……」

「…」

「社長が、刀ごと折られて＿」

矢継ぎ早に鮮明に。

たった今見てきた事のように、ひとりひとりの死因を上げていく。

「…投げ、飛ばされた敦の首が曲がって、鉄柱につ、つらぬかれ、て、」

ひゅ、と空気を吸い損ねる音がした。

はくはくと口を動かす乱歩は過呼吸になり掛けている。

「乱歩！」

私を抱き締めたって治らない。

しがみついて離れない腕を無理矢理引き剥がして蒲団に潜り込む。

やっと顔が同じ高さになった。

「Aっが、」

「落ち着いて」

先ずは其の口を塞ぐ。

啄むより重く、深くより浅く、吐息のやり取りをする。

「っは、ぁ、はぁ、」

「…そう、ゆっくり、息を吐いて」

酸欠でくらくらする頭はもう乱歩の事しか考えられない。

「私が、如何したの」

「A、が」

「うん」

「また、僕を置いていった」

「…」

「化け物ごと炎に呑まれて、誰もAの事を覚えてない」

まるで存在ごと燃え尽きてしまったかのように。

「此処に居るよ」

「そう、だな、」

「もう大丈夫だから」

ゆっくりおやすみ。

そして＿

「＿また新しい朝から始めよう」

二本の腕でしかと抱いて、離れないように眠ろう。