迷宮解読26 ページ27
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「……」
門と向かい合う。
見上げる程大きく、私ひとりでは開ける云々の前に鍵に手が届かない。
だが其れも異能力を使わなければの話。
「使うしかない。覚悟ならとうに出来てる」
無茶はしないと約束している。
必ず隣に戻ると誓っている。
「…」
愛しい貴方に、相応しい力を。
愛しい貴方に、愛されるだけの価値を。
なんて_
「…ふふ」
_笑わせる。
上がる口角。
どうせ此の空間には誰も居やしない。
ならば遠慮する事はない。
「私は珀羅橋A」
守りなんてらしくない。
か弱く純粋だなんて反吐が出る。
上手く笑えないなんて冗談は更に笑えない。
愛しい人を愛したい。
其れが私の此の世界に生きる意味。
胸に手を置き、宣言する。
「異能力_『モノノケミステリヰ』」
展開する花札。
弾かれて飛び出す十二枚。
目眩く変わる景色に光が収束し人の形を取る。
「にゃははっ。やあっと出番だにぃ!」
太陽のように眩しい笑顔、砂糖のように甘い容貌、何にも勝る人為らざるヒト。
「やぁリィ君。久しいね」
私の運命共同体。
「お久ぁ♪ 今回は異能力として登場だよんお待たせ☆」
パチンっと決める綺麗なウィンクに幻覚ではなく星が飛ぶ。
「不用意な事言わないで。此の世界は」
「切れ者が多い。解ってるよん♪」
だあって俺っちが招待してるんだもん。
覗かせた舌は紅く、細めた目で見せる左右対称の笑み。
「此処にはバッシィだけ。詰まり、バッシィの異能力本体がお遊び程度って事も、鍵屋としての能力は俺っちの力である事も隠さなくて良い」
「ええ。太宰さんに…誰にバレても面倒よ」
リィ君が何者であるかの証明なんて出来ない。
「俺っちはバッシィの異能力好きだけどなぁ」
「花札から怪奇を召喚する異能力。異能力である時点で生まれるなら異能生命体でしょうに」
「あれは衝撃だったにぃ。まさか『憑物落とし』が出てくるとは」
「対峙したのが外国で本当に良かった」
神出鬼没でフッ軽な爺様。
同じ妖怪のよしみで、なんてあれこそ軟派と言うのではないか。
乱歩ではない探偵にも目を付けられるし踏んだり蹴ったりであった。
「其れでぇ…バッシィは此れ、開けるの?」
顎で示す門。
強気な瞳と上がる口角は、あぁ、私も同じ顔?
「怪しは専門外でお門違い。ぶっ壊しましょう」
「オッケー! そいじゃ、愛の力見せたりますかー!」
リィ君と繋いだ手を前に。
始まりの鐘が鳴る。
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にゃーちゃん - 初コメ失礼します!超面白いです!思わず一気読みしちゃいました!更新楽しみにしてます! (2022年2月6日 2時) (レス) @page47 id: 04c952a5b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2021年5月16日 19時