冷たい溺愛カップル【江戸川乱歩】 (ページ19)

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迷宮解読18 ページ19

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可愛い少女に誘われるがままに街を巡る。

此れは若しや誘拐？

拐ってはないから大丈夫だと信じたい。

「如何かしら！」

「もっと高い位置で結んだ方が良いわね。此の刺繍が貴女の瞳と同じ色、似合うわ」

「オ姉サン、服のセンスが好いのね！」

「貴女が可愛いからよ」

ほら、店員も見惚れている。

「オ姉サンも可愛いわよ」

「有り難う。此のリボンも着けて見て」

「…暗い色ね」

手渡したリボンに首を傾げる少女。

単体で見るとそうだけど。

「明るい貴女の髪にはほら、深緑が映える」

「凄い、綺麗…」

「一気に引き締まって大人のレディって感じね。其れ、プレゼントしても良いかしら」

「良いの？」

「貴女以上に似合う人いないもの」

黄金の滝がくすむ心配も有ったが矢張り少女の美しさが勝った。

きっと何色を着ても少女自身の色に染まるのだろう。

作り物より造り込まれた少女の色に。

「エリスちゃあーん！こんな処に居たのかあーい！」

「嫌だ、リンタロウだわ」

げ、と少女の顔が一瞬にして歪む。

其の顔さえも愛らしいのだから思わず笑ってしまう。

「エリスちゃあーん！大丈夫かい？今日は探しても全っ然見付からないから心配したよー！」

「迷子になったのはリンタロウでしょ！私はオ姉サンとデェトしてたの！」

「ん？呉や、君は…」

「初めまして」

名乗るべきか如何か。

交わった視線に全ての答えが有る。

「…初めましてお嬢さん。エリスちゃんの面倒を見て呉れたようで有り難う」

「私の方がお世話して貰ったようなものです。楽しかったわ、有り難う」

「此のリボン大切にするわ！」

「エリスちゃん！なんて可愛いらしいんだ其れに似合うドレスを買いに行こう！」

「リンタロウとは嫌！」

辛辣な切り返しにめげる様子はまるでない。

其れ処かより一層笑みを深くする。

「では此のお嬢さんに頼もうか」

「え」

「好いわね！私、オ姉サンと一緒にいたいわ！」

「と云う訳で如何かな。我が家へ来る気は無いかね？」

舌を巻く。

美しい少女と蠱惑的なおじ様。

心が浮わついて拐われてしまう＿

「生憎だが彼女は僕のだ」

＿愛しい人がいなければ、の話だが。

「おや…先客がいたか。残念だ」

「仕方がないわね。また会いましょ」

拍子抜けするほどあっさりと去っていくふたつの影。

残された私は翡翠の瞳に捉えられ、

「浮気か？」

「ふふ、まさか」

こんなにも貴方色に染まっているのに。