第63話 ページ22
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ゴン、と響いた重い音に、樋口ちゃんがぎょっと声を出した。
「……流石に其の声は無い」
「いきなり訪ねてきたAさんが壁に頭を打つからですよ?!」
「うん、私が悪かったよごめんね」
沈んだ声で謝ると樋口ちゃんが可哀想に慌て出す。
「書類に不備でも?」
背中に目がついていないから分からなかったが、恐らく芥川くんもまたぎょっとした様子で目を見開いていたのだろう。
不備を犯した部下は今直ぐにでも、と言わんばかりの殺気を放つ彼に手を振る。
「違うの。少し頭を冷やしたいだけ」
「中原さんと何か有ったのですか」
「……
部屋の入り口、扉の横で踞る私に二人は顔を見合わせる。
「自白剤の件ですか?」
「其れもある。芥川くんと樋口ちゃんには何て伝わってるんだっけ」
ボスから通達された
「Aさんから聞いたものと変わりませんが…」
樋口ちゃんが言うには、地下で薬品を浴びて中也がおかしくなったと云う程度らしい。
「
「婉いでも捕らえたと言うんだね、好きだよ芥川くん」
「? ありがとうございます…?」
「だ、だめですよ先輩はわた_いえ、あのえっと!」
可愛い芥川くんと樋口ちゃんをからかって少し落ち着いてきた。
「自白剤と麻痺薬が効いたと云うのは知ってるんだね?」
「はい。自白剤の威力は大したものではなく、共に吸い込んだ麻痺薬の方が強力であったと」
「芥川先輩の捕らえた男に同じ自白剤を作らせて実験しましたが、通常時ではよく喋るようになったという程度でした」
「精神治療に使われる薬で、効き目としては尋問にも使えぬ……Aさん?」
そう、自白剤単体では医療用。
通常では効かない深いところまで作用した結果があの中也なのだ。
「……芥川くんは科学者の男を尋問したんだよね」
「はい。……そう云えば、あの男は麻痺なんて用意していないとか」
ゴン、と響いた音にまた樋口ちゃんが声をあげかけて飲み込む。
「戯れ言と思い忘れておりましたが」
「報告はしようね…確かにあの爆弾のなかに麻痺は無かったんだから…」
大人しく陳列されていた爆弾を見たのは一瞬だったが、間違いなく名札のなかに麻痺の文字は無かった。
「しかし、では麻痺薬は」
「……不思議だねえ」
「若しや…?」
「え、そうなんですか?」
目を泳がせる。
「………申し訳ない」
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檸檬 - とっても面白いですね!つい一気読みしちゃいました。更新楽しみにしてます! (2020年12月27日 23時) (レス) id: b134bf3ec5 (このIDを非表示/違反報告)
青い夕日 - 好きです。頑張ってください! (2020年7月2日 21時) (レス) id: e84367e7a0 (このIDを非表示/違反報告)
はるか - コメント失礼します。 とっても素敵な作品ですね!! 今、一気読みしてきました! 更新頑張ってください!!! (2020年6月20日 13時) (レス) id: b682e16ecf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2020年6月17日 15時