第59話 ページ18
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「Aだわ！」
重力を感じさせない動きでぴょんと飛び付いてきた幼女を抱き留めた。
くるくると回してから片膝をつき、細く小さな手をとって微笑む。
「エリス嬢、御機嫌は如何ですか」
「此の前のドレス、とっても気に入ったの！ 次は色違いで買いましょう！」
「実は特注品なのですよ。ふんわりとしたスカートで防弾のタフタ生地が美しく揺れるように」
「素敵！ 大好きよ！」
「私も大好きですよエリス嬢」
自然な流れで椅子に座り、エリス嬢に甘いロイヤルミルクティーを淹れる。
ボスは一度も視界に入れていない。
「エリス嬢、本日は御髪を下ろされているのですね。宜しければ結わせて頂いても？」
「リンタロウが赤のリボンを付けてくれって五月蝿いのよ。私は此の空色の蒼が好いのに！」
空色。
「……本日の御召し物には赤がお似合いですが、エリス嬢の絹のような黄金色には何色でもよくお似合いですよ」
にこにこと満足そうに笑うエリス嬢はありがとう、と元気に言う。
けれど、その手から蒼、空色のリボンを離さない。
「でも今日は蒼の気分なの！ だってAの色だもの！」
「私の…？」
空色の蒼が？
黙っていたボスと目が合った。
「エリスちゃん、そろそろA君が訪ねてきた理由を聞きたいのだがね？」
「私に会いに来たのよ！」
「其れは間違いない。何故ならエリスちゃんは世界で一番可愛いからね」
「でしょう？ A」
可愛い天使の上目に首肯し微笑んだ。
「勿論。いつだって私はエリス嬢の為に」
「あれ、私に忠誠を誓っていなかったかい？」
「エリス嬢を前にして揺らぎました」
「其の反応は正しいよA君」
薄ら笑いを浮かべたボスは、其の雰囲気のまま話を続ける。
「中原君の件かね？」
長い前髪がさらりと流れた。
大人の笑みは、血を流すことを厭わないボスの顔。
「ええ。闇を支配する凶悪マフィアの幹部サマが、一科学者の薬品如きにやられるなんてことあるんでしょうか」
「A君には効かなかったのにね。君もそう云う訓練を受けていたのかな」
「私は中原さんほど深く吸い込みませんでしたから」
君も、と云うことは矢張り中也も訓練は受けていたのだろう。
幹部ともなれば、其の訓練はかなり過酷なものの筈。
拷問や薬品に対する耐性はあったと云うのに。
「一緒に吸い込んだ麻痺薬が鈍らせたようだよ。深く吸い込んで、最終的に作用したのがあの薬だったのだろう」
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檸檬 - とっても面白いですね！つい一気読みしちゃいました。更新楽しみにしてます！ (2020年12月27日 23時) (
レス) id: b134bf3ec5 (このIDを非表示/違反報告)
青い夕日 - 好きです。頑張ってください！ (2020年7月2日 21時) (レス) id: e84367e7a0 (このIDを非表示/違反報告)
はるか - コメント失礼します。 とっても素敵な作品ですね！！ 今、一気読みしてきました！ 更新頑張ってください！！！ (2020年6月20日 13時) (レス) id: b682e16ecf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：梦夜深伽 | 作成日時：2020年6月17日 15時
