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第46話 ???side ページ50





「おや…貴女お一人ですか」

軽薄な笑みを浮かべ入ってきた男を一瞥して、女は不愉快であると言わんばかりに目を細める。

「彼女が帰って(・・・)来たと聞いたのですが…」

其の様子に気付いていながら、男は笑う。

すれ違い(・・・・)になった様ですね」

残念です、と言葉とは裏腹に愉快そうに続けて女の正面へ。

女の鋭い視線を意にも介さず、其のまま腰を下ろした。

「其処は貴方の席ではありませんわ」

「ですが、もう此の席に座ることはないのでは?」

「誰のせいで_」

声を荒らげ身を乗り出しかけた女が、カチャリと音を立てた茶器に気づいて座り直す。

紅茶は既に冷めていて、華やいでいた香りも今は空気に溶けてしまって感じることが出来ない。

其れでも新しい紅茶を頼まず、名残を惜しむようにしている女に男はまた愉快そうに口を開いた。

「ええ、ぼくのせいです。彼女を疑わせた(・・・・)、ぼくのね」

「……」

黙した女に向かって男は続ける。

「彼女が此処に居ては、拐うことが難しかったので」

日焼けを知らぬ真白な肌で、紫の双貌が妖艶に、不気味に輝きを放つ。

にっこりと裂けたような口からは上機嫌な笑い声がくつくつと溢れた。

「…随分と、機嫌が宜しいのね」

「念願のものが手に入るのですから。当然です」

闇よりも深く濃い黒髪がさらりと流れ、片瞳を覆った。

「貴女方が手放したお陰(・・・・・・)です」

感謝していますよ、と告げられた女は震えた手をそっとテーブルの下へ隠す。

「紅茶のお代わりなら早めに頼んでください。遠くからでは時間が掛かりますので」

「わたくしの部下があれだけだと思って?」

「此の近辺にはあれだけでしょう」

男は此処に来るまでに誰とも会っていない。

そして女も、誰も差し向けるつもりは無かった。

此の男に手を出すだけ無駄であると、正しく理解していた。

「いつまで居座る気ですの。わたくしのお茶の時間を邪魔しないでくださるかしら」

「ぼくは御礼を伝えに来たのですよ」

「礼?」

いぶかしむ女は自らの髪を弄ぶ。

其の目は何を言い出すか、と警戒の色に染められていた。

「彼女が世話になった御礼に_」

「!」

死の鼠が這い廻り見つけた、組織内の溝鼠の情報。

書類を一枚残して男は立ち上がる。

彼女が居ないのならもう用は無い。

「お気をつけください」

真綿で首を絞めるような、優しい忠告だった。

「鼠は…何処にでもいますから」

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梦夜深伽(プロフ) - 加奈さん» 中也の出番はこれから増やします!! (2020年6月6日 19時) (レス) id: 885dd45dfc (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 中也。 (2020年6月3日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
梦夜深伽(プロフ) - るるさん» ありがとうございます! (2020年6月3日 1時) (レス) id: fef69d0af7 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 文章が丁寧で物騒でめちゃくちゃ面白いです...!!更新楽しみにしてます..!!!! (2020年6月1日 15時) (レス) id: 30c2a422ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2020年5月24日 23時

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