検索窓
今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:13,667 hit

・ 太宰side ページ23






「……無い」


ポート・マフィア、異能特務課のデータベースを

駆使しても見付からない女の素性。


脳裏に浮かぶ胡散臭い笑み、

彼女なら自分から嬉々として消していそうだ。


思い出して欲しいと素直に言えば善いのに。


尚、此の件は後に予想が当たっていたと

知るのだが、今は関係の無い事。


話を戻そう。


結局、花束を手に帰社するも

与謝野女医は戻っておらず、

姿を見せたのは翌日の始業時間だった。


「帽子を被った黒犬に噛まれそうな

美人を見掛けてね、ちょいと躾てやったのさ」


非常に残念な事に思い当たる人物がいる。


更に、連続心中事件。


此の事件が鍵となる事など明白。


「と、云うわけなのだけど芥川君。


何か知らないかい?」


易々と侵入に成功し、

秘蔵の書庫を端から漁り、

中也の車に爆弾を仕掛けに行こうとして気付く。


中也の車がない。


どうやら任務も無く休暇中、

出掛けていても可笑しくはない、が___


「中原幹部は……」


目を泳がせ、あからさまに視線を逸らす。


無論、見逃す私では無い。


「彼女の事…知っているね?」


(やつがれ)は、口止めされている故…」


「へえ、私よりも慕っているのだね」


「其の様な事は__!」


嗚呼、使えない。


溜め息を大きめに吐いて、

これ見よがしに落胆した所に。


「余り苛めるでない、治よ」


「姐さん…」


「ほれ、黒蜥蜴が探しておったぞ。


此処は(わっち)が引き受けよう」


艶やかな遊女の様な和服姿、結われた髪に

見慣れない簪を見付けて直ぐに分かってしまった。


「ほう…忘れておっても気が付くかえ」


「連続心中事件は()で起きてる。


しかしマフィアは動いて(・・・)いない。


彼女の好きにさせている、その腕を高く買って」


「名も知らぬと云うに、

えらく気に入っておる様じゃのぅ」


「『恋仲』に近い(・・)関係だったんでしょう」


「…ふふ」


斬り込むと、袖で口許を隠し笑われた。


簪を指先で撫でて、背を向け歩き出す。


「既に真相は見えておろう?


斯様に油を売っておる暇は無い筈じゃ」


探すふりであると、見透かされている。


失ってから気づくというが、

失ったことも失っている私がどうしたらいい。


振り返った姐さんが昔の私に向けたような

慈しむように笑みを浮かべる。


「彼女とは紛れもなく『恋仲』じゃった。


面倒になる位、らぶらぶであったよ」

第四章『覚知』→←・ 中原side


ラッキーアイテム

名も知らぬ人からの微笑み


目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (28 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
47人がお気に入り
設定タグ:文スト , 太宰治
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

6月の飴玉 - 様々な視点で描かれているので、とても新鮮でおもしろいです!! (2020年5月18日 12時) (レス) id: 913e8668f8 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2019年7月9日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。