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「あはっ_あは、あはははっ! あは、あははっ」
荘厳な日本家屋。
畳張りの大広間で、黄金に縁取られた洋椅子に
凛と背筋を伸ばし、座っている女。
長い黒髪、やや垂れ目の優しい瞳、
鼻筋の通った整った顔、微笑む朱の唇。
長い睫毛を伏せて笑いが落ち着くのを
待っていた女は、微笑んだまま話を続ける。
「御理解、頂けましたでしょうか」
「私とあんたの異能力を、
神様がうっかり取り違えたって?
そんでもって探偵社に入るのは
此の世界の中心も
ぷ、くくくくっ…あっははははは!」
可笑しくて堪らない、と云う風に
腹を抱えて笑うAに、女の背後に控えていた
男が苛立ったように一歩前に出る。
「止めなさい。彼女は客です。
未だ傷が付いては困ります」
「その男、邪魔なら首輪でもしとけば?
ペットは飼い主に似るらしいし、
あんたの本当の姿も其処から見えちゃうかもよ?」
「貴女の異能力は封じてあります。
其の程度の脅し…嗚呼、冗談でも言わないと
恐さが紛れませんものね?」
「付け焼き刃のお嬢様言葉、無理すんなよ。
親の遺産で大豪邸住んで今年十九?
中身はもっと下そうだな、幼稚な自己中心型_」
「_うるさいっ!!」
「ッ__ちっ、お札の無駄遣いだろ。
一枚で十分なのに身体中にべたべたと…
付箋ですらこんなに貼らないのに」
肩で息をする和装の女は、
木箱から大量の札を片手で雑に掴みあげる。
「私はね、神様から全部聞いてるの。
九十九の妖怪の力を自分のモノに出来る
メインヒロインのチート異能力だってね。
其のデメリットは一つの妖怪の力を長時間
宿し続けると心を喰われてしまうことだけ。
あぁ、もう一つあるわね。
太宰治の『人間失格』以外に、
妖封じの札でも無効化されること。
調べてるのよ。
貴女、男をたぶらかす『女郎蜘蛛』、
頻繁に使っているでしょう。
太宰治だけじゃない、中原中也に、国木田独歩、中島敦、探偵社、ポート・マフィア、組合、魔人まで__
_どうして私の邪魔ばかりするのよっ!!!」
投げつけられた札を笑いながら受ける。
「其れで? 『私』が欲しいんだろ?」
遊戯しようか、と。
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名も知らぬ人からの微笑み
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6月の飴玉 - 様々な視点で描かれているので、とても新鮮でおもしろいです!! (2020年5月18日 12時) (レス) id: 913e8668f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2019年7月9日 16時