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静かに昇降機の到着を告げる音を聞いていた。
幹部の隣を歩く私は白シャツに短パン、
ロングカーディガンとボスに会える格好ではない。
サンダルで晒した素足が冷気に触れて、
肌寒さに笑みを浮かべる。
「防御力低すぎ」
「攻撃は最大の防御なんだろ」
「今の私は素手だよ? 攻撃力が何処にあるのさ」
「いくら手前でも武器持って
はいどうぞ、って入れるわけにいかねーんだよ。
……探偵社辞めたんだろ。うちに来い」
足を止めて、振り返りまでした中也の目は本気で。
「熱烈な
「プロポーズじゃねぇ!
ポート・マフィアに来いっつってんだよ!」
「あは、分かってるってば。
顔赤くしないでよ此方まで恥ずかしい」
すれ違う黒服の皆さんの視線が生暖かい気がする。
中也に睨まれて口を閉ざし
静まった長い廊下を歩き続け、辿り着く。
「首領、中原です」
この前の仕事以来…
いや、
エリス嬢は…会うのは久し振りか。
「まァ、椿姫じゃない!」
「舞姫ちゃん、久し振りね」
「其の呼び方は止めて。
リンタロウが調子にノるの」
「じゃあ私の姫も止めてくれる?」
「似合うのに…仕方がないわね」
金髪縦ロールの碧眼、人形のように可愛らしい
エリス嬢は不満気に頬を膨らませて拗ねてみせる。
「途中で猪口齢糖を買ってきたの。
可愛いエリスちゃんにあげちゃう」
「美味しそう! ねぇ、一緒に食べましょう?」
「あー、エリスちゃん、
先に彼女と話をしても善い哉?」
幼女の外見に見合わずグイグイと腕を引かれる。
其れを微笑ましそうに眺めるのは
冴えない中年の男_イケオジの森さん。
「森さん、交差点以来ですね」
「あの出逢いは運命的だったね。実に興味深い」
「偶然すれ違っただけでしょう。
マフィアのボスが白昼堂々、護衛無しなんて
何かあったら中也の首じゃ済みませんよ」
「はは、相変わらず面白いことを言うね」
「笑い事じゃありませんよ…」
実際にヘマをした負い目はあるようで、
強く言えない中也は代わりに
私を恨めしげに睨むことに留めるようだった。
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名も知らぬ人からの微笑み
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6月の飴玉 - 様々な視点で描かれているので、とても新鮮でおもしろいです!! (2020年5月18日 12時) (レス) id: 913e8668f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2019年7月9日 16時