【6】潤 SIDE ページ6
彼女は、そう言って微笑(わら)った。
彼女の笑顔に、また…胸が、ｻﾞﾜついた。
しばらくして…
とあるｽﾃｰｷﾊｳｽの駐車場に、到着した。
車を降りて、ふと見ると…先に降りていた彼女が、空を見上げていた。
潤:「どうかしたんですか？」
優亜:「珍しいなぁ…と思って。」
彼女が指差した先には…
細い上弦の月と、その月の少し上に、一つだけ瞬く星があった。
徐々に暮れてゆく、空の中で…
その月と星は、少しずつ…輝きを増していった。
潤:「なんか…綺麗ですね。」
優亜:「えぇ。とっても。」
彼女の、穏やかな表情に…胸の奥が、温かくなった。
店に入り、彼女が薦(すす)めてくれたｺｰｽを注文した。
やがて…
出て来た料理は、どれも本当に美味しくて…
特に…名産のﾋﾞｰﾌを使ったｽﾃｰｷは、最高だった。
潤:「さすが…外国人の方達が、ここの地名を知っているはずだわ。美味しかった♪」
優亜:「喜んで頂けて、よかった。」
潤:「あの…」
優亜:「はい。」
潤:「ここの料金…」
優亜:「あぁ…ご心配なく。」
潤:「でも…」
優亜:「ご馳走させて下さい。今日、一日…お付き合い頂いた、お礼です。」
潤:「けど、それって…俺が無理言ったんだし…」
優亜:「松本さん。」
潤:「はい？」
優亜:「年上の言うことは、素直に聞いて下さい。(笑)」
潤:「…はい。(笑)」
俺は、素直に従うことにした。
店を出て、車に乗り込んだその時…
潤:「あの…」
優亜:「はい。」
潤:「俺、お酒飲みたいんですけど、よかったら…付き合ってもらえませんか？」
優亜:「…分かりました。」
俺は、車のｴﾝｼﾞﾝをかけた…
数十分後･ﾎﾃﾙの、俺の部屋…
潤:「すみません。部屋まで来てもらって…」
優亜:「いえ。でも、大丈夫ですか？」
潤:「え…？」
優亜:「初対面の人間を、ﾎﾃﾙの部屋へ入れるなんて…」
潤:「えっ？」
優亜:「もし、私が“悪い女”だったら…どうします？」
彼女は、俺をじっと見つめた後…悪戯っぽい笑顔を見せた。
潤:「俺に、何かするつもりですか？」
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作者名：愁(ｼｭｳ)
| 作成日時：2010年12月27日 2時
