黄色いベースにかけた想い【Hikaru.Y】

＊ ページ47

なぜにこうなった。
まず、普通にいつも通りわいわい練習していた｡

ん？

あれ、それがいけなかったのか？

リーダーであるゆーてぃが
"最優秀賞目指していこう！" と
みんなを纏めて練習の士気は高まった。

ただ、みんな目標が目標なだけに
無理をしすぎて焦りが前に出てしまったのだろう。

気持ちが前へ前へ行き過ぎると、
音楽はぎくしゃくしてズレが生じる。

誰が悪いとかじゃなく、
本来の力を持て余してしまい、
普段通りの演奏が出来なくなってしまった｡

「私、ゆーてぃ追いかける」
「ふは、俺も今そう思ってたとこ」
「俺も」

そうこなくっちゃ。
まだ校内にはいるはずだからね。

「よっしゃ行こ！」

途中、ハゲが目立つ学年主任とすれ違って
"ちょ、廊下は走るなあ！" って怒られたけど。

先生ごめんなさい！
今行かなきゃ間に合わないの！

心の中で謝って、
頼りになるあの長身の背中を追いかける。



下駄箱で靴を履き変える直前の姿を見つけた｡

「あ、ゆーてぃ！！」

「！」

びっくりして振り返ったゆーてぃは
安堵の表情を浮かべていた。



「ちょっと言い過ぎた、ごめん」
「いのちゃん…みんなごめん、俺焦っちゃってた」
「うん。みんなそれぞれ焦りすぎてたんだよね」

「目標高いからって焦ってもしょうがねーじゃん？
だからいつも通りの俺らの実力で勝負しよーよ」

「気持ちのベクトルが同じ方向いてないと
音楽は揃わないもんね、よかった」

「そーだよ、音楽は楽しむものじゃん？
自分達が楽しまなきゃ意味も価値も生まれないよ」

これはいつか、
光くんが初心者の私に言ってくれた言葉。
私もそう思う。



これで無事に仲直り。
よし、文化祭まであと1ヶ月。

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す