7:魔除け ページ8
──日本国内の怪死者・行方不明者は、年平均10000人を超える。
「その殆どが、人間から流れ出た負の感情──“呪い”による被害だ」
「呪いぃ?」
虎杖は、いかにも胡散臭そうな目つきでポリポリ頭を掻いた。
それはそうだろう。
「お前が信じるかどうかなんてどうでもいいんだよ。続けるぞ」
伏黒は表情を更に険しくしながら、その言葉通り話を続けた。
「特に学校や病院のような大勢の思い出に残る場所には、呪いが吹き溜まりやすい。辛酸・後悔・恥辱……人間が記憶を反芻する度、その感情の受け皿となるからな」
ここで一息ついてから、伏黒はまた話し始めた。
「だから学校には、大抵“魔除け”の呪物が置いてあった。オマエの拾ったのもソレだ」
「魔除け?」
虎杖が首を傾げる。
「ならいいじゃん。何が危険なの?」
「魔除けといえば聞こえはいいが、より邪悪な呪物を置くことで他の呪いを寄せ付けない……毒で毒を制す悪習だ。現に長い年月が経ち、封印が緩んで呪いが転じた。今や呪いを呼び寄せ肥えさせる餌」
伏黒の話を聞きながら、Aはずっと説明が上手いなあと思っていた。補足説明も必要なさそうだ。
「その中でも、お前の高校に置かれていたのは特級に分類される危険度の高いものだ」
「だからね、実害が出ないうちに回収しなきゃいけないの」
最後はAが締めた。
……と、虎杖は
「俺は、別にいいんだけどさ」
そう言いながら、木箱をAの手元に向けて放り投げた。
Aはぱしっとそれを受け取り、蓋をスライドさせて開けた。
──刹那、Aの表情が固まった。箱の中身を覗き込んだ伏黒の表情も、同様に固まる。
「先輩に言わないと」
木箱の中には──何も入っていなかった。
(空……!?)
(俺達が追ってきたのは、箱にこびりついた呪力の残穢……!!)
「中身は!?」
伏黒が、物凄い勢いで虎杖の襟元を掴んで怒鳴った。
Aも咎めはしない。状況は、明らかに慌てるべきものになってきている。
「だァから、先輩が持ってってるって!!」
虎杖は若干キレ気味だ。
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