21:私情です ページ22
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「それで済んでるのが奇跡だよ」
五条はそう言うなり、虎杖の額に2本の指をトンと突き立てた。
すると虎杖の身体がガクンと脱力し、五条の腕の中に沈んだ。Aが大きな目を見開く。
「悠仁!?」
「何したんですか」
「気絶させたの」
伏黒の困惑気味の問いに、五条が「重っ」と呟いてから、何のことも無さげに答えた。そして続ける。
「これで、目覚めた時宿儺に体を奪われていなかったら……彼には“器”の才能がある。──さてここでクエスチョン! 彼をどうするべきかな」
Aは思わず下唇を噛み締めた。
……どうするもこうするも、宿儺の指ともなる超危険な特級呪物を口にした虎杖を、
器の才能の有無なんて、考えに入れてくれるかどうか……。
──だけど。それでも。
「……仮に器だとしても、呪術規定に則れば虎杖は処刑対象です」
Aの隣で、伏黒が俯かせていた顔を上げて五条を見据え、はっきりと言った。
「──でも、死なせたくありません」
(!!)
Aが伏黒の横顔を見上げる。
覚悟の決まった、何かが吹っ切れたような、そんな様子を窺えた。
Aも一瞬目を瞑って気を引き締めてから、負けじと五条を真正面から見返して彼の“クエスチョン”に答えを返した。
「私も。悠仁には絶対に死んでほしくないです」
「……君ら、それ私情?」
「100パーセント私情です」
「何とかしてください」
一切怯むことなく、真剣な表情を崩さずに、Aと伏黒は言った。
すると五条は、愉快げに「クックック」と笑いを溢したかと思えば、2人に向けて頼もしげにびしっと親指を立てた。
「可愛い生徒達の頼みだ! 任せなさい」
.
──そして、時は再び現在に戻り。
「……ってなわけで改めて! 君、死刑ね」
目の前で呑気に語っていた五条が随分あっさりと発した言葉を、到底すぐには理解できず、虎杖が「何言ってんだこの人」と言った感じに顔をしかめさせる。
──いや今の流れ、完全に死刑回避の方向に進んでただろ絶対……。
「回想と展開があってねーんだけど」
「いやいや頑張ったんだよ」
少々恨めしげに口調を荒げてみるも、五条の飄々とした態度は少しも崩れやしない。
「死刑は死刑でも、執行猶予がついた」
執行猶予、と言い慣れない言葉を呟いてから、虎杖がハッとしたように顔を上げる。
「今すぐじゃねえってことか」
「そ。一から説明するね」
頷いてから、五条は自分のズボンのポケットをゴソゴソやり始めた。
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YUKIKA(プロフ) - 続き待ってます (2022年12月9日 2時) (レス) @page23 id: 342256db66 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2022年3月12日 20時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - 夢花さん» ありがとー!!! 全然大丈夫よ!姫はHEROになれるかの方も更新頑張るね!(*^▽^*) (2021年9月10日 21時) (レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)
夢花(プロフ) - ヒメちゃん新作おめでとう!!!言うの遅くなってごめんよ_(._.)_ (2021年9月10日 21時) (レス) id: 78d9e81099 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - まくすうぇるさん» 話の流れは原作通りにするつもりなのですが、救済についてはまだちょっと考えています。やるかもしれません。地獄が軽減される(?)かもしれません。悩ましいです……! (2021年9月1日 17時) (レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)
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