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「ねぇ。最後に私のワガママに付き合って…。」
「うん？」
「…一緒に寝てくれる？」
「あぁ。」
奪い取った本を横のテーブルに置いてギュッと私を抱きかかえてくれた。
「私はこの部屋に居て良いのか？」
「うん。あなただから良い。」
「そうか。」
優しく布団を被せられエルヴィンの胸の中に頭を寄せた。
「私はもう権力が無くなった。」
「あぁ。」「残っているのは何？」
「…。」
「私の近くに居た人間が明日になったら誰もいなくなってしまうんじゃないかって思うと寝るのが怖い。」
「A。」
「うん？」
カーテンを閉めているせいで部屋が薄暗い。
でも見上げたエルヴィンの顔ははっきり見えた。
「私はいるぞ。」
「…！」
また止まったはずの涙がこぼれた。
「分かっているだろう？私は最初からAの権力には興味は無い。」
「…知ってる。」
「明日になってAから権力が消えたとしても私には何も関係は無い。」
「…。」
「調査兵団の人間もそうだろう？最近までAの正体すら知らなかった。」
「…うん。」
「なぁA。君は壁の事や世界の事はこの壁内で一番知っている。しかし違う事は知らなすぎだ。」
「…え？」
「人間。」
「…。」
「私利私欲の貴族しか見てきていないだろう？この世界は調査兵団の兵士たちのような人間に溢れている。」
「…っ。」
ずっと昔の記憶を思い出した。
壁に来る前
大将・軍師・兵士・民衆達と勝利を祝い飲み食べ騒ぎ夜が明けるまで眠らなかった日
味方を守るために死んだ兵士に皆で涙を流した雨の日
全員で地図を囲み策を練った夜
私自身の体験じゃないけどそれを思い出すだけで楽しくなり悲しくなる。
「…忘れていた…。」
「うん？」
「大事な事を忘れていたなってっ…！」
エルヴィンのシャツをギュッと掴んでおでこをこすりつけた。
「…うぅ…。」
止まらない涙をエルヴィンの胸に沈めて隠した。
そんな私に背中を優しくトントンと叩いてくれるのが心地よくて安心する。
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作者名：じゅく子 | 作成日時：2019年11月21日 20時
