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「エルヴィン。あなたが壁内に残って頭を働かせてくれるのが敵にとって一番困る話。私なんかよりもあなたの方が敵から問題視されているの。」
エレンを奪い返した時にライナーがエルヴィンも来たことに焦っていた顔が頭をよぎった。
「あなたが壁内に残って。」
「いいや。それは出来ない。」
「なぜ？一本のアンカーとブレードでどう戦うつもり？」
「私は最悪…死んでも構わない。Aは私を高く評価し過ぎた。ハンジやアルミン…いくらでも代わりはいる。」
「それは分かっている。あの２人も兵団を引っ張っていくに大きな問題は無い。でも＿＿」
「なら良いだろう。私は何と言われようが行くと決めている。リヴァイにもそう言った。」
「なら私も行く。」
「A。」
「私だって何て言われようとも行く。私も死んでも構わない…それだけの仕打ちを人類にしてきた。けじめだよ…人々に“嘘”をついて壁に閉じ込めた重大な罪。贖罪の為にせめて…人々が平和に暮らす為の広い土地を取り返しに行く。」
じっとエルヴィンを見つめていたが急に力が抜けて肩にトン…と頭を乗せた。
ぼーっとしてきて今日は酔いの回りが早い。
「…あなたに死んでほしくない。」
「A…。」
「ねぇ。考え直して。私とハンジで指揮を執るから…お願い。」
顔を上げずにシャツをギュッと掴んだ。
「A…。」と小さく呟いたエルヴィンがそっと頭を撫でてくれた。
「すまないが…Aのお願いでもそれは聞けない。」
「…。」
「私はエレンの家の地下室に行き…「世界の記憶」が明らかになる瞬間に立ち会わなければならない。」
「世界の記憶…。」
「初代レイス王が人々から奪い去った記憶。壁を…記憶を取り返しに私は行く。」
「エルヴィン＿＿」
バッっと顔を上げてエルヴィンを見たが決意の籠った目に言葉が詰まった。
もしかしてその為に調査兵団へ？
確か…エルヴィンの父親も同じことを言っていた。
レイス王が奪った記憶＿＿その奪い去られた記憶は私が持っている。
その記憶がエルヴィンがずっと求めていた答え。
私がここで答えを言ったらあなたは信じる？
それとも酔っ払いの戯言だと笑い飛ばす？
行くのをやめてくれる？
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作者名：じゅく子 | 作成日時：2019年11月21日 20時
