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エルヴィンside
「Aさんだ！！」
「本当だ！！」
ワァッとAを新兵が取り囲んだ。
ウォール・マリア奪還作戦を直前に控え注射薬の事や作戦を伝える為に兵士を集めたがAが来たことで少し騒ぎになった。
そんなにAは人気だったか？
昔からの調査兵団の人間も少し驚いていた。
「Aさん！ウォール・マリア奪還で活躍をしたら俺をぜひ中央憲兵に推薦お願いします！！」
「お前！抜け駆けはずるいぞ！！俺の活躍も期待してください！必ずAさんの力になれるように頑張ります！そうしたら家族に内地で暮らす権利をぜひ！」
「おい！！Aさんは権力のある方だぞ！！そんなにがっつくな！！」
あぁ…そういう事か。
私が分かったのと同時に調査兵団の人間も分かった様子で大して興味の無さそうに離れた。
隣に居たAを見下ろすと表情の無い顔。
新兵達を冷たい目で見つめる久しぶりに見たその顔に少し背筋が凍った。
また私の知らない所で知らない軍隊が動き新兵が“無かった事”になるではないか…と。
昔のAの笑顔の裏にあった見えない恐怖。
思い出した微かな恐怖と新兵に対するイラ立ちで自分の眉間にしわが寄ったのが分かった。
この光景が前に寝た時にAが言っていた権力にしか興味の無い人間がAに群がる様。
「滑稽だな。」
私の呟いた言葉に気づかず新兵達の目は全員Aのループタイへ向けられていた。
その色は政府上層部の人間しか持つことが出来ない色。
壁内で力をもつ人間にのみ許された代物。
旧体制が崩壊した直後はAの階級は今よりもはるかに下だったが日々の仕事ぶりや知識の幅に魅せられ満場一致ですぐに総統と変わらない立ち位置を掴んだ。
Aは狙っていたわけで無さそうで今でも政府の方針に大きく口出しはしていないらしい。
各界担当の人間の相談に答えている程度。
それでも絶えず人が集まるのはAが信頼を置かれている証拠になっていた。
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作者名：じゅく子 | 作成日時：2019年11月21日 20時
