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「あれ…エルヴィン見ていないな…。」
ガタガタと運び出している間をすり抜けて行くと奥でエルヴィンが本を読んで立っていた。
「おさぼりはいけませんよ。」
「うん？」
本から目線だけを外して見下ろされた。
「おっ…。」
エルヴィンが読んでいたのは歴代の調査兵団の壁外調査報告書。
一番上には女型と交戦したのが残っている。
「…随分昔から戦いたかったようじゃないか。」
「…ふふ。」
報告書には毎回ペンでここが悪い。
こう改善するべきだ。
この行動は違う。
こうすればこう動いた。
とか大量に書き込みをしている。
「私もAに報告書で怒られていたんだな。」
「…でも見てみて？」
「ん？」
持っている本を一緒に覗いてページを戻すと訂正箇所ばかりで、もはや元の文書が見えない程に書きなぐられた報告書が続いた。
「これは…っ。」
エルヴィンが苦笑いをこぼした。
「エルヴィンの何百倍も歴代の団長は報告書で怒られているよ。…あまりにも酷い時は会議中にガリガリ書いて直した。」
「私はまだ良かった方か。」
「歴代最高の団長だよ。私が保証する…だから私はあなたに賭けたの。」
「…そうか。」
何か少し思いつめた表情。
あっごめん。プレッシャーかけすぎた？
「エルヴィン…？」
「あぁ…何でもない。私も人類の為にウォール・マリア奪還を成功させる。」
「そ…そうね？」
「あ！Aさん！」
ヒストリアが戻ってきた。
「どうだった？」
「物凄く広くて快適ですね！私なんかがあんな所に住んで良いのでしょうか…？」
「何言っているの。女王様なんだから胸を張って！」
「はい…あとあの大きなベッド…。」
「…っ。」
言葉に詰まった私にエルヴィンが少し近寄ってくれた。
大丈夫。
あなたが最後にあそこの思い出を塗り替えてくれたから。
「…私はおすすめしないよ。あれは。」
「え？…ええ！私じゃなくてこれから孤児院を創ろうと思っていたので、子供たちみんなで寝れるベッドに使っていいかなーって！思いまして…。」
「良いと思うよ？何人でも寝られると思うし。」
「本当ですか！？ありがとうございます！」
「よかったですね！ヒストリア！」
「うん！」
サシャとヒストリアがまた楽しそうに走って行った。
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作者名：じゅく子 | 作成日時：2019年11月21日 20時
