嘘 -3- 【エルヴィン・スミス】 (ページ1)

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ガチャン…

「…ぅ。」

体中が痛くて寝がえりをしようとしたら何かに手首が引っ張られ戻された。

ゆっくりと目を開けると石畳の暗くて寒い部屋。

私…生きていたのか。

この場所には見覚えがある。

(牢か…そりゃぁそうなるよな…。)

体にかかる圧迫で包帯がきっと脇腹に巻かれていると思う…わざわざ治療したのか…。

手首が引っ張られないように入口の方へ体を向けた。

「…えっ。」

少しまぶしい牢の檻の外にはエルヴィンをはじめとする調査兵団の面々。
そしてザックレー総統にピクシス司令、ナイル師団長が立っていた。

「…何？全員で見つめられても…何も芸はできないけど。」
「A。起きたか。」

真ん中にいたエルヴィンが口を開いた。

「見ての通り…ケニーに撃たれて巨人の熱風に晒され…あの洞窟に置き去りにしてもいずれ死んだのに連れて帰ってくるとは…私に聞くことなんて無いでしょう？どうせ貴族の奴らがベラベラ話して。」
「あぁ。」
「じゃあ用はないでしょ。さっさと殺して。私は人類を１００年騙し続けてここにいる全員に“嘘”をつき続け…殺されるだけの事はしてきた。」

痛い脇腹を庇いながら起き上がり背中を壁につけて檻の外を睨んだ。

「あぁ。でも殺すのはエルヴィンだけね。私はエルヴィン以外に殺されたくない。」
「Aは“嘘”をつき続けているのだろう？」
「ええ。」
「今も？」
「…。」
「戦の掟…第四条。勝利条件を明確にせよ。」
「…。」
「何の為に戦っているのか。最終目標を常に念頭に置くべし…Aの勝利条件はヒストリアがエレンの巨人の力を引き継ぐ事。」
「…そう。」
「しかしこの掟には勝利条件は一つとは書かれていない。」
「…。」
「Aは私に「勝ち」とは言ったが一度も自分が「負け」とは言っていないな？」
「…。」
「それはなぜか。…もう一つ勝利条件を作っていたから。」

フイッとエルヴィンから目線を外し顔をそむけた。