乗り過ごし注意【志麻】

34 ページ36

「…ふぅ」


「ふぅじゃないわ！
お前なにやっとんねん！
先にカフェ着いたから駅の方まで迎え行こうと思ったら変なやつに絡まれとるし！」


「別に好きで絡まれてたわけじゃないし」


「そりゃそうやろうけど
知り合いなん？」


「うん
塾で古典が一緒の授業ってだけなんだけど、向こうは私のこと気に入ってたみたいで」


「はぁー
それでいきなりあんなんなったん？」


「いきなりっていうか、前は一方的にずっとしゃべってたし家までついてきてたし
外で一回買い物してたら会ったことがあって、一緒にいた男子にキレてきたからめんどくさくなって今後関わらないでって言ったの
その後は話しかけられなくなったから平気だと思ってたんだけど」


「前々から実害でとるやん！
なんで今まで言わんかったん」


「別に何もなかったし
周りに迷惑かけてないならいいかなって」


私がそう言うと志麻くんはまた怒り始めてしまった


「お前はさあ、今日俺が来んかったら危なかったんやぞ、わかっとるか？
相手が同級生で車とか持ってないから良かったけど、大学生なったら車持っとるやつもおるから、そのままどっか連れてかれて女の子は本当に危ないんやぞ」

　
「は、はあ」


一気に捲し立てられて、軽い返事になってしまう


「お前はさぁ、本当に
心配してるやつの身にもなれよ」


「志麻くんは私のこと心配してくれてるの？」


「当たり前やろ」


あまり私にはない感覚だった


お姉ちゃんが大きくなっているからとお母さんは私が小さい頃から仕事に復帰していて、ここまで過保護になってくれたことはない


本人が楽しそうだから良いけれど


言うまでもなくお姉ちゃんは私よりイケメンに興味がそそられていた


「何ニヤニヤしとるんや」


気づかないうちに笑っていたらしい


「志麻くん過保護だなーって思って」


「別に過保護とちゃうやろ
兄として当たり前や」


「そんなこと言っても、私の家族の中では1番過保護だよ」


止められないニヤニヤを隠しながら志麻くんに着いていく


「大抵お兄ちゃんは妹が可愛く見えるもんなんです〜」


「そうですか〜」


どんどん嬉しくなっちゃって志麻くんに抱きついた


志麻くんの香水が私の鼻腔をくすぐる


ずっとこうやって仲良くしてくれたら良いな、とか柄にもなく考えてしまう


すると志麻くんは私の頭をわしゃわしゃと撫でた


「当たり前やろ」









Fin

あとがき→←33

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す