さんじゅうさん。 ページ34
.
夏休みも半分をきって、残り1週間。
暑さに耐えながら机に向かって宿題の山を片付けていたらスマホが軽快な音で連絡を知らせた。
『明日予定ある？花火大会行かへん？』
廉くんからお誘いの連絡だった。
素敵なお誘いにずっとしまい込んでいた母の浴衣を出した。
「お父さんに告白された時に着ていた浴衣なのよ。
ちょっと古いかしら」
お母さんは真剣な顔で着付けをしてくれた。
きっとこれから廉くんと出かける事を知っている。
付き合ってるの？とは聞いてこない。
神社の鳥居の外。
石畳の階段の下で待ち合わせた。
歩きにくい下駄で足元を見て歩いていると、
急に優しく肩を触れられた。
「下ばっか見てると危ないやん」
少し高い、なまりのある綺麗な声。
「ありがとう。足元が悪くて」
右肩に乗っていた廉くんの左手の指が頬を撫でた。
そういえば君は左利きだったね。
左利きは天才が多いって知ってた？
「綺麗やね」
ため息のように吐き出された言葉に心臓が大きく鼓動して、体温が上がる。
「ありがとう」
緊張で声が震えた。
指先がビリビリと痺れる。
脳みそが溶けそうだ。
廉くんの目が私の体や顔、髪の毛を行ったり来たりしている。
ほんのり赤く染まって見えるのは祭り用の提灯のせいだろうか。
「行こう？」
廉くんはいつも、この言葉を合図に私の手を握る。
人混みの中で流されないように強く握られた手はとても熱くて、
私に合わせられた歩幅は普段の半分くらいだった。
日は落ちたのに地面から発している熱と人混みの体温でじんわりと汗をかく。
「暑いね。大丈夫？」
「うん、廉くんは？」
「大丈夫だよ。
なんか食べよっか」
「あれ？
廉じゃん！
なんだよお前も来てたのかよー！」
うん、と返事をしようとした時、
突如前方からハイテンションな声で見た事がある顔がちらほら。
「お前らが行く祭りってここかよ」
「そーだよ！誘い断って結局来てんじゃん！」
「今日は元々別の子と行く約束だったんだからしゃーないやろ」
集団の奥、じっと私を睨むあの子。
と思ったらパッと笑顔になって廉くんに話しかけた。
「ね、だったら一緒に回ろうよ！
せっかくサッカー部で行こってなってるのに、
廉だけいないとかおかしいじゃん！
田中さんもそう思うよね？」
だめ、
なんて言わせる気ないくせに。
------
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1854人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「King&Prince」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
藍(プロフ) - ゆかさん» 直ぐには無理ですが、気長に待っていただけると嬉しいです(>_<;) (2018年11月23日 23時) (
レス) id: 6c68d58261 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - ゆかさん» ゆかさんコメントありがとうございます！繰り返し読んで頂けて嬉しいです。続編はおいおいあるかもしれませんがこのページの容量がいっぱいなので別の形になるかと思います。 (2018年11月23日 23時) (レス) id: 6c68d58261 (このIDを非表示/違反報告)
ゆか(プロフ) - 完結後もずっと読んでます!お時間があればで構いませんので付き合った後のお話書いて欲しいです。 (2018年11月23日 21時) (レス) id: 52df92afc4 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - ひかるさん» ひかるさん！！笑 コメントありがとうございます！ まぁ実際には...いないですよね笑笑笑 うぉー！！それは頑張って完結させなければ...なかなか遅筆になってるのでおまたせしてしまうかと思いますが、もうしばらくお待ちください(>_<;) (2018年10月17日 11時) (レス) id: 20736a0343 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる - 実はこっちも読んでました笑 廉くんの見守り方が素敵でいちいちイケメンでキュンキュンしました///私の学生時代にもこんな人がいてくれたらなぁって思ったり… 神くんの新作は完結したら読もうかなと笑 (2018年10月17日 6時) (携帯から) (レス) id: 075c6f1d28 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：藍 | 作成日時：2018年8月9日 0時
