ギュッとギューッと。

#36 ページ36

宏光がニュージーランドへ戻るまでの1週間は瞬く間に過ぎた。

夏風邪で高熱を出して早退した次の日、宏光の看病の甲斐あってか体調はすごく良くなってた。

宏光と居たくて仮病でも使ってやろうと思ってたのに宏光にそんなの通用しなくて、迷惑なことに学校に行く支度を手伝ってくれた。

行ってこい、ちゃんと居るから。

そう言って顔の横で可愛く手を振る宏光に見送られて学校へ向かう。

廊下で会った横尾さんに宏光が一時帰国してることを伝えたらすぐに会いに来た。
感動の再会ぐらいお互いに駆け寄って抱きしめ合う2人は本当に嬉しそうだった。

日本はまだ夏休みには少し早くて、宏光と居られる朝と寝るまではずっと一緒にいた。

宏光が日本を発つ前日の日曜日。
俺と宏光は朝から買い物に出掛けた。

2人で買い物に出かけるのは中学生ぶりだったけど昔に戻ったようにはしゃいだんだ。

楽しい時間は憎らしいくらい早く過ぎて、もう今日は宏光がニュージーランドに戻る日。

俺は学校で見送りに行けない。

「見送られたらさ…行けないよ」

淋しそうに笑った宏光は儚げで可愛かった。


朝、いつものように学校へ行く支度を手伝ってくれて、逆に俺が玄関で見送られる。

今度宏光と会えるのは留学を終えて帰国する約半年後。

そう思うと宏光に背中を向けられない。

そんな俺の気持ちを感じ取った宏光。

太輔んとこ帰ってくるから、待っててよ。
次、会えた時に太輔に伝えることあるから。

またな。

明るくそう言った宏光は俺をくるりとドアに向けさせると背中をバシッと叩いた。



眩しいほどの青空を機体をキラキラさせて飛行機が飛んでいる。

またな、宏光。
待ってるよ。

心の中で呟いた。

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