事の発端 その2 ページ2
マジかよ、報われちゃったぜ俺の初恋！！
今ならこの屋上から飛び降りても傷一つなく生存できる気がする！(いや、実際には無理だ)
あぁ、これから俺は彼女に「時也君」なんて呼ばれちゃって、俺は彼女を「時雨」とか呼んじゃったりするのか。
今まで彼女にフラれてきた男たちよ、どうか天国から俺と彼女の幸せを祝福してくれ！
・・・実際のところは地獄から怨嗟の声を響かせてくる気がするが。
そうなったとしても、俺は彼女の愛で打ちのめしてみせるがな！！
「はははははははははは！」
「なにしてるの？」
「え！？あ、ご、ごめん！」
危ない危ない。
折角実った恋を変な妄想で自ら破壊するところだった。
ていうか相変わらず無表情だ。
実をいうと、彼女の表情筋はあまり働かない。
寧ろ常時スリープモードだ。
それでも可愛さも美しさも溢れ返っているのだから恐ろしい。
「・・・でも、嬉しい。私もずっと声かけようと思ってたから」
「へ、お、俺に？」
「うん。一年生の時から」
「マジですか！！」
なんだそれ嬉しすぎるじゃないか。
ひょっとして今までの告白を断ってきたのも俺が好きだったからなのか！？
だとしたら俺はもう何も怖くない！
「早く行こう」
「う、うん」
で、現在。
やっぱり解らなかった。
てっきり俺は、喫茶店辺りに行くと思っていたというのにまさかのラーメン屋、極麺。
部活帰りの男や仕事帰りの人に評判が高いラーメン屋だ。
まさか、俺の「付き合ってください(イケボ)」を「(ラーメン屋に)付き合ってください」と思ったのか？
いや、そんなまさか・・・
そうだ、きっとこれは俺に気を使ってくれたんだ！
俺が大のラーメン好きだと知ってのこのチョイスなんだ！
「大将。替え玉」
「あいよっ！」
替え玉頼んじゃったよ！！
ていうかもう食べたのか！？
い、いや、俺は緊張のあまり彼女はおろか自分が何を頼んだのかすら覚えていない。
きっと小盛りだったんだ。
その小盛りが意外と小盛り過ぎて小盛りの替え玉を頼んだんだ、そうに違いない。
「はい、替え玉おまち！相変わらずいい食いっぷりだな！うちの大盛、結構多いんだぞ？」
大盛だった！！
がっつりいってた！！
そして大将と知り合いだった！！
これで、小盛りが意外にも小盛りだった説と、俺の好物を知っていた説が完全に消えてしまった。
いや、だからといって引きはしないが。
「・・・冷めるよ？」
「あ・・・うん」
一旦思考を止め、俺は箸を割ることにした。
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作者名：甘楽 | 作成日時：2018年9月4日 18時
