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｢あんたの名前も、教えてや｣
宮さんは真っ直ぐこちらを見つめて言う。
『わ、私は…七瀬…です…』
あまりの真っ直ぐな視線に怖気づき、苗字だけを名乗り目をそらす。
治｢んん？下の名前は？もったいぶらんと教えてや｣
更にずいっと身を乗り出してくる宮さん。
近すぎる。
『あ、えと、A、です』
おずおずと名前を告げる。
治｢七瀬Aさんか……ええ名前や｣
満足そうな顔をして私の名前を呼ぶ宮さん。
なんだか心がむずがゆかった。
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治｢七瀬さん、また来てな｣
あの後、店を後にする時またあの花のような笑顔と共に言われた。
残り物で作ったしお金は要らないと言われたけどさすがに払わないなんてことは出来なくて半ば押し付けるようにしておにぎりの代金を支払った。
宮さん最後まで渋ってたけど。
あれから2週間ほどが経った。
相も変わらず私は仕事に追われていて、あの日以来おにぎり宮には行けていない。
それでも今でもたまにあの時の出来事をふと思い出す時がある。
『お腹すいたなあ〜』
なんて呟きながら今日もデスクに山積みとなった書類と睨めっこをする。
時計の針は正午を指そうとしていた。
この調子だと今日は22時くらいまで帰れないんじゃないかと思って頭が痛くなる。
『また来て言われても、行く時間無さすぎやわ…』
正直、私の性格上今までは仕事を終えて疲れきった体でどこかに寄るなんて事自体がめんどくさくて退社したら家に直行していた。
帰ったらやることを済ませて時間が空いたら趣味のゲームをしたり、漫画を読んだり、動画を見たりして、眠くなったら寝る。
それが毎日の流れだった。
『はぁ〜あ、私が行くんじゃなくておにぎり宮が来いや…』
なんてニートがよく言ってそうなセリフをボソッと呟き、再び仕事に手をつけようとしたその時、
オフィスのドアが開いた。
｢こんちはー、お世話になっとります｣
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作者名：るた | 作成日時：2021年10月12日 0時
