53(樹side) ページ5
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樹side
唇をきゅっと結び、涙が溢れないように堪えるA
平静を装いながらも
不謹慎にもドキドキと胸の音は収まらず
何故か彼女は俺から目を逸らさない
樹「泣いていいよ」
頭に手をそっと置いて、ぽんぽんと撫でてやると、綺麗な涙が一筋、頰を伝った
樹「一人でよく我慢したな」
流れ出る涙を、一生懸命拭おうと、頰を手の甲でグイッとさすっていて、慌ててその手を止める
樹「腫れるだろ…」
掴んだ両手を太ももの上におろして、代わりに両手で流れ出る涙を親指で優しく拭う
小さな顔は、俺の手の平に収まりそうで
全てが愛おしいのに、そんなAを泣かせる奴があいつなのが気にくわなくて、許せなくて
余裕の無さに自分でも情けなく思っていると
「梓さんね、陸さんと付き合ってるって…」
目線を落として、悲しそうに呟いた
「陸さんが大切にしてる私と、仲良くしたいと思ってるって、言ってくれたの…」
樹「ん…そっか」
ゆっくりと話す彼女は、次の瞬間、落としていた目線をあげて視線を合わせた
「梓さん、すごくいい人だったの…
なのにね?…なのに私っ…!」
今から何を言い出すのか、何となく理解出来て
思わずAを胸へと引き寄せる
樹「…もう何も言うな」
「でも…」
樹「いいから」
人一倍責任感があって、優しくて人の気持ちに敏感な彼女だからこそ、城ヶ崎梓を憎む自分が許せない
神様はどうしようもなく意地悪だ
静かに嗚咽を漏らすAを立たせて
離れないように、更に強く抱き締めた
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樹「もう俺にしとけばいいじゃん」
「…え?」
樹「Aが好き…本気で」
固まったままで動かないAの身体を離して顔を覗き込むと、驚きからか涙は止まっていて
樹「…アホづら笑」
「なっ…」
瞬きをパチパチして文句を言いたげなAを笑ってやると、目線を外しながらばか…と零す
樹「待ってるよ、Aの気持ちが落ち着くまで」
弱ってる時に告白なんて柄じゃないし、ずるい事してるのは分かってるけど
樹「けど…Aが俺の事しか
考えられないようになればいいって思ってる」
白くて滑らかな頰を包み込み上を向かせて、おでこに優しくキスを落とした
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りい(プロフ) - とても良かったです!!! (2021年10月11日 2時) (レス) @page50 id: 23552ed598 (このIDを非表示/違反報告)
蘭(プロフ) - 美憂さん» 読了、コメントありがとうございます!素敵だと言っていただけるいっちゃんが書けて良かったです(^^) (2021年3月15日 1時) (レス) id: 9208e0cc5d (このIDを非表示/違反報告)
美憂(プロフ) - 最高な作品でしたー。いっちゃん素敵! (2021年3月13日 22時) (レス) id: 35846edb09 (このIDを非表示/違反報告)
まいぽん(プロフ) - 蘭さん» ありがとうございます!ぜひ読ませていただきます!! (2020年3月10日 23時) (レス) id: 0b1b1da15f (このIDを非表示/違反報告)
蘭(プロフ) - まいぽんさん» 返事が遅くなってしまってすみません涙 今度また藤原樹君のお話を書かせて頂いた時には、まいぽんさんをもっと虜に出来る様に頑張りますね(^^) (2020年3月10日 18時) (レス) id: 9208e0cc5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蘭 | 作成日時:2019年1月7日 20時