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54(樹side) ページ6

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樹side







ちゅ、と額にキスをしてAを見ると、目を丸くして俺の胸辺りから視線をあげようとしない




顔を覗き込むと、小さな両手で俺の両腕をおろし、パッと顔を逸らされた









樹「...A」









こんなに近いのに、手に入れられない




他の男が好きなのは、一番近くに居るから分かる




こうして気持ち伝えても
Aを更に苦しめるだけだったかもしれない









樹「…ごめん」









昼にあんな事があった上に、頼りにしてた男にも気持ちぶつけられて、Aはどう感じたか




余裕の無さから起こした行動。




側に居てやらないといけないけど
今の俺には謝る事しか出来なくて




背を向けてその場から立ち去ろうとすると




ツン、とジャケットの裾が伸びる感覚に止められる









樹「…どした?」









振り返ると、Aは裾を遠慮がちに引っ張っていて、下を向いた彼女は、身長差から表情が読めない




裾にある手を掴んで、屈んでみると









「…一人にしないで」









と、小さな声を絞り出すように口にした




ゆっくりあげられた顔




彼女はまた瞳に沢山の涙を溜めていて、溢れ出すのにそう時間はかからなかった









樹「何で泣くの…俺が変な事言ったから?」









止まったはずの涙を再び両手で拭ってそう聞くと、ふるふると首を振った









「も、分かんない…自分でも分かんない」









そうだった…




彼女の容量を考えてなかったのは俺だ




抱え込みすぎると、訳分かんなくもなるもんな




泣き止まないAを引き寄せて、背中を優しく、規則正しく、子供をあやすようにトントンと叩く




すると、両手で胸を少し押され、身体を離すと









「俺の事しか考えられないようにって…
どういう意味?」









…って笑




俺の腕の中で、思い出したかのような表情で、純粋な目で見上げるもんだから、堪らなく愛おしくなる









樹「言葉のまんまだよ?…だから」









前、Aが道で泣いた時と同じように
頰の涙の跡にキスを落としていく




時折小さく漏れるAの声に、暴走しかける自分を抑えながらも、わざとらしく音を立ててゆっくりと









樹「…今、誰の事考えてる?」









顔を離してそう聞くと
少しだけとろんとした表情で、彼女は言う









「…藤原、樹」


樹「ね?…そういう意味」









そうやって、俺で一杯になればいい



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りい(プロフ) - とても良かったです!!! (2021年10月11日 2時) (レス) @page50 id: 23552ed598 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 美憂さん» 読了、コメントありがとうございます!素敵だと言っていただけるいっちゃんが書けて良かったです(^^) (2021年3月15日 1時) (レス) id: 9208e0cc5d (このIDを非表示/違反報告)
美憂(プロフ) - 最高な作品でしたー。いっちゃん素敵! (2021年3月13日 22時) (レス) id: 35846edb09 (このIDを非表示/違反報告)
まいぽん(プロフ) - 蘭さん» ありがとうございます!ぜひ読ませていただきます!! (2020年3月10日 23時) (レス) id: 0b1b1da15f (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - まいぽんさん» 返事が遅くなってしまってすみません涙 今度また藤原樹君のお話を書かせて頂いた時には、まいぽんさんをもっと虜に出来る様に頑張りますね(^^) (2020年3月10日 18時) (レス) id: 9208e0cc5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年1月7日 20時

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