episode 5:出番 ページ7
レイシフト先は延々と広がる荒野。降り立った私達を武器を持った獣たちが取り囲む。
マスターは慣れたように兵に指示を出し、彼等もまたそれを軽々とこなしてみせる。
「ネロとマルタは前方を!槍ニキと刑部姫は後ろを頼む!」
「りょうかーい。あぁもう、私は引き篭ってたいのに!」
マスターには事前に私の術についての説明をしてある。それを踏まえてこの采配、私は全方位への牽制担当か、もしや補欠か。
いずれにせよ、マスターの判断が絶対だ。私はただ言われた通りに事を成すだけ。そこに自身の意思など不要。ただの荷物にすぎない。
「おいマスター、ちと様子がおかしくないか?倒しても倒しても湧いてきやがる」
「恐らくここが霊脈の近くだからではないでしょうか。人理を修復しても、僅かでも綻びがあればそこから出てきてしまう。こちらに迷い込んだ者達は霊力に誘われて際限なく現れる。そういうことでしょう」
聖女マルタは冷静に推測を立てる。その言葉のあとに小さく吐かれた聖女らしからぬ発言は、聞かなかったことにしておこう。
「だとしたら一旦離脱する必要がある…オロチ、頼める?」
「問題ありません。主の御心のままに」
一呼吸のうちに私の影は広がり、そこから湧き出たものは形を成していく。
漆黒の大蛇。それは数を増やしていき、ついに8匹目が現れた。
片方だけ開かれた琥珀の瞳が敵を睨む。
「蹂躙しろ。そして全てを喰らい尽くせ」
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作者名:巳月 要 | 作成日時:2017年12月25日 22時