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湯気 ページ10

「仲良しごっこはもうおしまい」

腹に差し込まれた刃物がとても熱いのに冷たい。
彼は容赦なく引き抜き、突き刺しを繰り返す。たまらず私はよろめいて壁に強く背をぶつける。
酷い話だ。この人は私を喋る肉塊とでも思っているのだろうか。
タイミングを見計らって、刃が刺さると同時にその手を両手で握りこんだ。

「ね、痛いんだけど」
「もっと他に……なんかないの」
「……贅沢だなあ」

血のあぶくを吐きながら軽口を叩く。

「……自意識過剰だけどさ。あなた、またひとりだね」

ぼんやりと呟くと思い切り引き抜かれた。
油断していた両手をすり抜けて、鞘から引き抜かれたように、けれど体には確かな穴を開けながら刃は遠ざかる。
立ってなどいられなかった。
壁に背を預けながらズルズルと座り込む私に静かなつぶやきが降ってくる。

「余計なお世話だよ」

その声が震えていたように聞こえたのはきっと気のせいだ。なんてお決まりの締め文句で終わる私と彼の物語は、きっと喜劇に違いない。

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作者名:ふたひみ | 作成日時:2021年6月25日 10時

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