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井戸水 ページ8
「ひまー」
軟体動物のようにぐんにゃりソファーに腰掛ける彼に苦笑する。
適当にテレビのチャンネルを変え、飽きたようにローテーブルに放る彼を咎めるとあからさまに顔を顰めた。
「無理に行動を共にしなくていいのに」
「いいよ。僕がそうしたいだけだから」
ぐう。と間抜けな音が隣から聞こえた。
そう言えば。朝から何も食べていなかった。
「何か食べる？」
問いかけ、ふと気づいた。
まるで家族ごっこのようだ。
私が家に忍び込むのはそこに住む人々の温もりを感じたいがためだが、結局はその異常性故にひとりだった。だけど今は彼が隣にいる。
私は独りではなかった。
胸を締め付けるせつない感情を抱きしめながらそっと息を吸った。こんなの、きっと錯覚だ。
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作者名：ふたひみ | 作成日時：2021年6月25日 10時
