すっからかんと伽藍堂 (ページ5)

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純水ページ5

帰路に着く人々に紛れ、夕日に照らされた住宅街をひたすらに歩く。
夕飯時だからか、辺りには腹のすくような匂いが漂っている。
まるでマッチ売りの少女だ、なんて考えてしまう。マッチを刷らずとも夢が見れるなんてなんだか得をした気分だ。
まあ、醒める時間がわからない分、恐怖すら伴うものなのだが。

向こうから見知った人が近づいてくる。
彼は犯行時徒歩で行動していたのか？
血液の付着した服で帰宅するのは些かリスクが高い気がする。
では今日はただの散歩か。
等考えながら、すぐそこまで迫った彼へと……厳密にはその先の道へと歩を進める。

そして、言葉もなくすれ違った。

声をかける理由はない。
彼は彼の道を歩いているのだから。

意識を家々に戻した。夜はこれからだ。
それぞれの家庭を思い描いて頬を緩ませる。
ああ、なんて楽しいのだろうか。