検索窓
今日:34 hit、昨日:95 hit、合計:8,223 hit

ページ10

You side


彼はそう言って、私の意思もろくに問わず、そのまま怪我の手当てをし始めた。フョードルさんが私の人差し指を優しく握ると、みるみるうちに包帯が巻かれていく。私が瞬きを3回くらいした頃には、すでに怪我の処置は終わっていた。


「おぉ……」


「あまり動かすと傷口が開きますよ」


私が感動のあまり包帯が巻かれた人差し指を動かしていると、フョードルさんにそれを目ざとく見つけられた。にしても、今日はフョードルさんの新しい一面を沢山見つけているような気がする。

彼があんなに驚いているのは初めて見たし、包帯が上手に巻ける所なんて尚更知らなかった。今度、フョードルさんに包帯の巻き方教えてもらおうかな。万が一、怪我した人が教会に来ても困らないようにしたいし……。


「フョードルさん、ありがとうございます……!」


「いえいえ、聖女様の為であればお安い御用ですよ。またお困りの事があれば何なりと」


そう言って彼は笑いながら、頭を軽く下に下げて、左手を胸に、右手を腰に置いた。それはもう、西洋の王子様がするお辞儀そのものだった。

見目麗しい彼がその仕草をすれば、きっと殆どの女性が胸をときめかせるだろう。……勿論、私も例外ではない。今も、私の心臓は大きな音を立てて脈打っている。破壊力がとんでもない。


「おや?Aさん、どうかされました?」


「な、何でもないです……」


「あなたの仕草に胸がときめきました」なんて事は口が裂けても言えない。ドン引きされた後、その日から彼が教会に来なくなるのがオチだろう。それだけは絶対に避けたい。

フョードルさんがいなければ、他に友人や家族の居ない私は天涯孤独の修道女に逆戻りなのだから。


「Aさん。子供たちの朝食を用意しなくても良いのですか?」


「あっ」


そうだった、そうだった。私は台所(ここ)に怪我をする為でもなく、フョードルさんとの親交を深める為でもなく、子どもたちに朝食を振る舞う為に来たのだ。

私は漸くやるべきことを思い出して、冷蔵庫へと足を進めた。杏那くんと沙紗くん、待たせちゃってごめん……。


「い、急いで作ります!」

1-4:魔人と少年→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (39 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
71人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

びねつ(プロフ) - 夜のお魚さん» お褒めいただきありがとうございます……😭😭そう言って頂けると凄く嬉しいです🥲応援を糧に更新頑張ろうと思います‼️👍 (2月27日 20時) (レス) id: 50028a7fa3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:びねつ | 作者ホームページ:-  
作成日時:2024年2月25日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。