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You side
「え!?良いの!?……ですか!?」
「……」
私がそう言うと、溌剌とした子……沙紗くんは大きな目を輝かせた。年相応で可愛い子だなぁ。最近はあんまり子供と話せてなかったし、なんだか身に沁みる。
そう思いながら杏那くんの方を見ると、彼はどこか浮かない顔をしていた。
「あれ?杏那くん……だっけ。どうしたの?私、もしかして変なこと言っちゃったかな」
「いえ、大丈夫です……。でもその、お姉さんの教会には"魔人"が出る、って母さんが……」
杏那くんはそう言いながら、不安げに眉をひそめた。――確かに、私もその噂は何度か聞いたことがある。でも、"魔人"なんて恐ろしい物が私の教会に出たことは一度も無い。少なくとも、私はこの目で見たことが無いし。
「ふふ、可愛いね。……でも大丈夫だよ。私はこの教会に長い事住んでるけど、"魔人”なんて怖い奴は一回も見たこと無いから。勿論、本当だよ」
私が杏那くんの頭を撫でると、彼は照れたように顔を隠した。そして冷静さを取り戻したかのように「コホン」と咳払いをすると、片割れである沙紗くんの方に歩みを進めた。
「――なら、よかったです。じゃあ、僕もお言葉に甘えて……」
「おわっ!?ちょ、杏那!足引っ掛けんなよー!」
「引っ掛かったお前が悪い」
「ぐぬぬ……」
2人のやり取りを後ろから見ている私は、思わず笑みが顔から零れそうだった。傍から見れば、きっと気味悪くニヤニヤしていると思う。
いいなぁ、兄弟がいるのって。私も兄弟が欲しかった。……あれ?そもそも、私って何人家族だっけ?私はどこで生まれたんだっけ?両親はどんな人なんだっけ?
そうやって頭の中で考え込んでも、その記憶は一向に戻ってこない。
「お姉さーん?どうしたの?お腹空いた?」
「んな訳無いだろ……。――大丈夫ですか?もしかして、体調が良くないとか……?」
思い出そうとする内に、2人の後ろに着いて行っていたはずなのに、いつの間にか歩みを止めていたようだ。
「――あっ、ごめん!ちょっとぼーっとしてたみたい。2人とも、心配させちゃってごめんね。さ、行こう行こう!」
本来、私は人々に気を配るべき立場なんだけどなぁ。端くれとは言え、修道女として情けないや。トホホ……。
「なら良いけど……。絶対無理しないでよ?」
「うん、分かった。大丈夫だよ、今の所は元気だし!」
なんて私が言っている内に、教会の礼拝堂に着いた。……あれ?
「誰かいるの?」
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びねつ(プロフ) - 夜のお魚さん» お褒めいただきありがとうございます……😭😭そう言って頂けると凄く嬉しいです🥲応援を糧に更新頑張ろうと思います‼️👍 (2月27日 20時) (レス) id: 50028a7fa3 (このIDを非表示/違反報告)
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