progress #1 ページ10
次の日の昼下がり、向井が仲の良い医者を連れてきてくれたおかげで、幸いにも岩本の体は何処も骨折していない事がわかった。
kj「めちゃめちゃ体強いやん、流石照にぃやわ」
sk「この筋肉が守ってくれたのかな」
iw「そうなのか……?」
医者が帰った後、岩本の回復が早そうであるとわかった所で、向井もそそくさと出て行こうとする。
sk「もう行くの? もうちょっとゆっくりしてけば?」
kj「一応仕事あんねん一応。それに……」
向井は真面目な顔をすると、言いにくそうに言葉を発した。
kj「めめ……ちょっとやばいかも」
iw「どういう事だ、」
kj「警察が目付け始めてん」
今まで物盗りを繰り返してきた目黒達だったが、警察は積極的に彼等を捕まえようとはしていなかった。言っちゃ悪いが、物盗りなんてこの街じゃ日常茶飯事だからだ。
しかし、命を奪う勢いで何人も襲っているとなると、流石に黙って見ている訳にも行かなくなる。現に、意識が未だ戻っていない被害者もいる。向井はそう白状した。
iw「そこまでやってるのかあいつ」
sk「……これも阿部ちゃんがやらせてるんだよね」
iw「……そう、だな」
kj「せやから、真面目にめめ達が何処におるのか見つけなあかんねん。俺以外の警察が先に見つけたら……めめ捕まってまう」
岩本は眉間に皺を寄せた。それだけは避けなければいけない。
あの兄弟を完全に引き離すような事をしたら、確実に二人とも壊れてしまう。
kj「そうなる前に何処におるのかはよ見つけな、」
sk「じゃあ俺も行く。店は舘さんいるから大丈夫だと思うし、照だってまあ……大丈夫でしょ?」
iw「まあ、」
kj「とりあえず俺は行くわ、何かあったらまた連絡する」
iw「……ありがとう」
向井が部屋を出たのに続き、宮舘に外出許可を得ようと佐久間も出て行った。
一人になって、岩本の脳裏にはあの日の阿部の姿が過ぎる。
《さっさと死ねよ!!》
阿部は目黒にどこまでやらせるつもりなのだろうか。
まさか、目黒に一線を踏み越えさせるような事はないだろうか。向井の話を聞く限り、可能性はゼロではない気がする。
どうすれば良いか、そんなの答えは決まっている。深澤を止めるしかない。
深澤が止まれば阿部も止まる。目黒も助かる。
しかし一度離れてしまったせいで、壊れた深澤にもう一度会う事を怖いと思う自分もいる。
《全部お前のせいだ!!》
__わかってるよ、そんなの。
果たして痛みが消えるのが先か、岩本が覚悟を決めるのが先なのか。
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作者名:怜 | 作成日時:2020年11月16日 20時