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阿部はぼろぼろの岩本を見下すとすらすらと言葉を並べ始めた。
ab「ねえ照。今の目黒くんを見てどう思った?」
iw「……っ、」
ab「お前のせいで一人の「異端」が壊れていくのを見て、どう思ったか聞いてんの」
iw「っ……お前、」
岩本が絞り出したのを聞いて阿部は口角を上げた。
阿部が目黒に見境無く街の人間を襲わせたのは、岩本にもう一度同じ苦しみを、同じ罪を味わわせるため。
目黒を深澤に見立てて、岩本を苦しめるため。
ab「ほーんと目黒くん可哀想。お前がいなければ俺にいいように使われる事もなかったのに」
iw「てめ……っ、」
岩本が健常な体なら今すぐに阿部に掴みかかっていた。しかし今の岩本には腕一本動かす事も辛い。
ab「まあいっか。目黒くん強くなりたかったみたいだし? 俺が不意打ちの方法教えてあげたから、照の事一瞬で仕留めちゃったもんね? よかったよねえ、強くなれて」
岩本は適当な理屈をほざく阿部を黙って睨みつける事しか出来ず、唇を噛んだ。
ab「ねえ、そういえば目黒くんに吹き込んだメッセージ受け取ってくれた? ぜーんぶお前のせいだって話」
阿部は終始口元に笑みを湛え、目で岩本を刺していた。
あの言葉が阿部のメッセージと聞いて、弱りきった岩本の中で少しずつ何かが繋がっていく。
ab「だってそうでしょ? あの子達が大変な目に遭うのも……ふっかが壊れたのも」
iw「……っ」
ab「お前のせいでふっかは壊れたの。お前のせいで、あんなに優しかったふっかが鬼みたいになったの」
iw「……なあ、阿部」
岩本はか細い声で阿部に問うた。やっと、やっと気付いた。
目黒を深澤のように狂わせたのも、目黒を利用して岩本を追い詰める事をほざいたのも、目黒に岩本を殺させようとしたのも、全ては阿部のたった一つの感情がそうさせたのだ。
深澤に従う振りをして、深澤に黙って岩本を潰そうとした阿部の原動力は。
iw「俺を……恨んでる、のか」
阿部は岩本の言葉を鼻で笑った。それだけでは飽き足らず声を上げて笑い始めた。
ab「お前さあ……本当に馬鹿だな」
はーあ、と笑いを収めた阿部は岩本に恐ろしく冷ややかな目を向けた。
ab「やっと気付いたの?」
阿部は岩本の顔に自身の顔を近付けると、小さな、しかしはっきりとした声で岩本に言い放った。
ab「俺はお前が嫌いだよ。お前を恨んでる」
目を見開く岩本に構わず、言葉の刃をぶつけた。
ab「ふっかを壊したお前を死ぬ程……いや、殺したい程憎んでる」
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作者名:怜 | 作成日時:2020年11月16日 20時