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iw「……っ!?」
mg「……なのに、」
目黒は立ち上がると再び鉄パイプを振り上げた。
mg「お前のせいなのに……!」
それが腹に振り下ろされて、岩本は堪らず咳き込む。
mg「お前のせいで……お前のせいでラウは……!!」
その言葉で岩本の頭が真っ白になった。
そうだ。ラウールが連れ去られたのは、怖い思いをしたのは、どう考えても自分が元凶で。
しかもそれだけじゃない。
mg「……お前のせいだ、」
ラウールが怖い思いをしたのも。
目黒が壊れてしまったのも。
渡辺が道を踏み外したのも。
阿部が目黒を苦しめるのも。
__深澤が血に狂ったのも。
mg「全部……全部お前のせいだ!!」
岩本は目黒によって__魔法の言葉を吹き込んだ阿部によって、全身を、心をとことん痛めつけられていた。
目黒の恨みが、それ以上にいろんな人間の恨みが一振一振に込められているような感覚に陥る。どんどん弱っていく岩本を見て、目黒は再び笑い始めた。
mg「っは……はは、あはは……ねえ、」
ぐったりしてろくに言葉を発せなくなった岩本に、再び目黒が話しかける。
mg「……殺していい?」
その言葉には岩本も耳を疑った。
深澤達は自分を連れ戻そうとしているんじゃないのか。なのに岩本を殺すだなんてどういう事だ。
目黒の意思か。深澤がそう指示したのか。それとも。
mg「教えてくれたの、」
目黒が恍惚の表情を浮かべて言う。
mg「お前を殺せたら、俺が強くなれた証拠になるって」
岩本を殺す事を誰かが吹き込んだのか。そういう事なのか。
だとしたら誰が。深澤だとは思えない。じゃあ阿部が? まさか渡辺が?
だとしたら何故だ。自分を連れ戻すんじゃなかったのか。
そんな岩本の混乱を解消してくれるのは、目黒の傍にゆっくり近付いてくる人物。
ab「お友達に襲われる気分はどう?」
目黒の隣に立った阿部が、場の状況にあまりにもそぐわない穏やかな微笑みを貼り付けていた。
ab「ねえ目黒くん、今日はもう終わりにしよう。先帰ってて」
阿部が優しく頭を撫でると、先程までぎらついていた目黒の瞳は途端に光を無くした。手から鉄パイプが滑り落ち、乾いた音を鳴らす。
岩本が阿部の能力を察知して思わず目を逸らすと、その間に目黒は背を向けて歩き始めていた。
ab「目黒くんを迎えに来たつもりだったのに、まさかお前に会えるなんて思わなかったよ」
阿部は岩本の顔の傍に屈むと口元だけでにっこり笑った。
ab「ね、久々に二人でお話しよ」
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作者名:怜 | 作成日時:2020年11月16日 20時