いれぎゅらーな君との時間［短編集］

［桃］ キ ス し た く な い 、 ページ22

『きす、！！したい！！』



「やだ」



私が頬を赤らめながら言ったそのセリフも君の心まで届いてなかったみたいで私は拗ねる



「なんでそんなキスしたいの？」



『もういいもんないくんのばかっ！！』



そう言って私は思いっきりないくんに抱きついた



ないくんはうわ、！？と驚きながらもしっかり私を抱きかかえてくれた



ぎゅーはいいのにちゅーはなしですか一文字しか変わらないのに



そーゆー問題ではないことなんてわかっているが



付き合ってから1年も経ってキスもないだなんて愛されているのか心配になってしまう



「Aは甘えんぼさんだね〜」



そう言って撫でてくるないくんが大好きで大嫌い



『...なんでないくんはキスしてくれないんですか、寂しいよ私』



ちょっと声のトーンを落としてそう尋ねてみると



ないくんは一瞬びっくりした表情を見せてはあ、と深くため息をついた



「キスしたときって目つぶるじゃん？」



『...え、？』



予想外な言葉が出てきて思わず変な声が出てしまった



『ないくんなに言って...



「目つぶるとAのかわいい顔が見えなくなっちゃうから嫌
　あと嫌だって言ったときのしょんぼりする顔が子犬みたいで可愛いからいじめたくなっちゃうの
　それに...



『ちょ、ちょっとまって、ストップ！！』



耐えきれなくなって私は思わずないくんの言葉を遮る



ないくんがそんなふうに思ってると思わなくて顔が真っ赤になった



ちゅ、



可愛らしいリップ音が部屋に響き渡る



『ふふ、顔真っ赤だよ』



ないくんにはちゅーしたいなんて言っちゃだめかもしれない



心臓がうるさい

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