検索窓
今日:14 hit、昨日:10 hit、合計:23,841 hit

夜の蝶 ページ2






夜が更け、掴めない暗闇がまとわりつく。



切り揃えた前髪。

揺れる髪飾り。

黒曜石のような髪。


歪み一つない刀身。

石楠花色が月光をはね返した。


月に照らされ、人知を越えた化物の死体が現れる。

残忍に切り刻まれている。



『さようなら。来世はお幸せに。』


少女がそう呟いて踵を返した。

刀を振り、付着した体液を落とす。


群青色をした瞳は底無しに濁っていた。

朽ちてゆく死骸を 心底憐れむような視線。






「伝令!伝令!
鬼殺ノ剣士ヨ!那田蜘蛛山へ向カエ!」


甲高い声が森に響いた。

漆黒の羽を持った鴉が喋っているのだ。



『了解。』

冷たく、凛とした声が返事をした。


静かに微笑み、任務先へと向かう。




。。。。




『ここが那田蜘蛛山ですか、ひどく臭いますね。』

不気味な山を前にして、少女が呟いた。


赤子でもわかる。ここは危険だ。

踏み入れれば、待っているのは死のみ。


それを何の変哲もなく、少女は山へ跳躍していった。




鬱蒼とした森。広がる地煙。蠢く何か。

地面に惨たらしい死体たち。

ある者は骨が露出し、
ある者は内臓が破裂し、
ある者は四肢の一部が欠損していた。



表情一つ歪ませず、辺りを見渡した。



『...ここらに鬼はいませんね。“しのぶ”さん。』

「そうですね。」


少女の視線の先、同じ背丈の少女がそこにはいた。

『しのぶ』と呼ばれた少女。

同じく“鬼殺隊”である胡蝶しのぶだ。

しのぶは鬼殺隊の中でも頂点に立つ柱の一人だ。

蟲柱として鬼殺隊を支え、悪鬼を滅する。


「では私は西に行きますので(おおとり)さんは“冨岡さん”のところへ向かってください。」

『承知いたしました。』


黒髪の少女、名前を鳳A。

鬼殺隊の上級隊員だ。



しのぶは地面を軽く蹴ると、木々へと跳躍して行った。

後ろ姿が見えなくなったところで、Aも跳躍して後方へ走った。

近辺で鬼の気配はしない。


夜風に揺れて 葉が触れ合い、音を出す。

異臭も夜風に乗る。

風を切る音。

血の臭い。

乱れた心音。

恐怖の声。


音を辿り、気配を探った。


地面を強く踏んで空中へ飛ぶ。

木の幹を蹴り、飛び移る。

それを繰り返し 速度が増す。


『...いた。』

そして目標を捉えた。



鞘から刀を抜き、鋭く構えた。

落下の速度を上乗せし、刀身が一直線を描いた。



出会い→←序章



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (75 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
151人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - 面白くて一気に最新話まで読み切ってしまいました...!続きが楽しみです、更新待ってます!!! (12月13日 23時) (レス) @page28 id: 872e19f483 (このIDを非表示/違反報告)
廣岡唯 - 面白い続きが観たい… (11月20日 17時) (レス) @page1 id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
雨音雨音(プロフ) - れんれんさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます😖💖!更新頑張ります! (2023年5月4日 11時) (レス) id: e8649b6138 (このIDを非表示/違反報告)
れんれん - ガチでガチでガチで面白いです!更新待ってます!頑張って下さい*\(^o^)/* (2023年5月4日 10時) (レス) @page12 id: 63496a6874 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:雨音雨音 x他2人 | 作者ホームページ:無いっス。  
作成日時:2023年4月1日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。