監視対象は純黒の悪夢を見る【名探偵コナン】

63.もしも ページ27

観覧車内部には配線を切る音が響く。後ろの水瀬からはもう質問も飛んでこない。

「一刻も早く解除して風見と合流しなくては」

次はこの線を切るんだったよな？

時限式では無いのでいつ爆発するかも分からない。そんな緊張感で独り言が自然と多くなり手が震え、焦りで冷や汗が垂れる。

「おっと、危ない危ない……こいつが光ったらアウトだ」

勢いで切りそうになり、一回手を止めて深呼吸。降谷は友人の言葉を思い出す。

『焦りこそ最大のトラップ』だったな、松田。
と、そういえばこれは遠隔で動くタイプだよな？

「水瀬」

作業を少しずつ進めながら後ろにいる彼女を呼ぶ……が返答がない。

「おい、みな……ッ水瀬起きろ！」

「……んえ？あ、寝てました」

振り向いて見れば彼女は睡魔にことごとく負けて眠っていて、声量を上げて起こすと水瀬は目を擦りながら返事をする。
こんな事態なのに呆れる程マイペース、焦ってしまっている僕に分けてほしい。

「こんなときに寝るな。……1つ聞きたいことがあるんだが」

「往復してきて疲れたんですよー、どうぞ」

「この遠隔爆弾は特定の電波を受け取ることによってスイッチが入るタイプだ。
その電波を感知、ひいては妨害することは可能か？」

「う、うーん。爆弾関係のやつなんてやったことないけどまぁ……できるかもです？」

水瀬の「できる」に思わず息を飲む。

「なら構えておいてくれ、いつ爆破されるかタイミングが分からないんだ」

「わ、分かりました。寝ないように気をつけます。
妨害電波なんか出してたらこんな大混乱の中、余計携帯電話とか使えなくなるけど……まいっか」

爆弾が爆発するよりはマシだよね、と彼女は呟く。

電波感知、妨害電波を出す、電磁力で壁に張りつく、シャッターを破るレベルの電気を打ち出す……水瀬の能力は色々な場面で使える。

「……」

……もしあの時、松田が観覧車で爆弾解体をしているとき彼女がいたら、と一瞬でも考えてしまった。
おそらく水瀬なら何かしらの方法で助けられるのかもしれない。
松田の取った行動が間違いとは言わないが、水瀬がいれば爆弾が爆破する直前のメッセージを見つつゴンドラから脱出できた未来もあったのかもしれない。

もし、もっと早く彼女と出会っていたら……それを考えるのはやめよう、今は解体作業が先だ。

頭を左右に振り気持ちを切り替えたその瞬間、視界が真っ暗になった。

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