《文スト》敵に恋しちゃ駄目ですか？[短編集]

国木田独歩 ページ33

御相手は、探偵社の理想主義者さん！


ーーーーーー


『国木田さん！例のブツが届きました！』

「嗚呼、其処に置いておけ」


はーい、と返事を返しながら、机の上に荷を下ろす。
重い振動に、何枚かの書類が舞った。


『無駄だと、思うけどなァ…』


これらの荷…“例のブツ”とは、名付けて「太宰更生道具」。
よくわからないものがたくさん入っている。トップは、さすまただ。
いや、何に使う気だ、これ。


『国木田さん、これ経費ですか？』

「そんなわけ無いだろう。全て俺の自腹だ」

『………いや何やってんの』


莫迦だ。この人は純粋で真面目な莫迦だ。


『ッていうか、出せばいいじゃないですか。独歩吟客！ッて』

「俺はそンなキメ顔などしていない！」

『今度写真撮ってあげます』

「撮らンでいい！」


いちいち反応してくれるあたり、几帳面な人だよなァ。
私はクスッと笑うと、「はいはい」と生返事を返した。


「A、お前も更生させてやろうか？」

『そのさすまたで、ですか？』


どうせさすまたなら、国木田さんの異能で出したヤツがいい。
なンてリクエストは、即答で却下された。


「もっと佳い方法がある」

『え、減給とかならやめてください』

「違う！」


声を荒らげた国木田さんが、その唇と私の唇を重ねた。
何処でそンなの覚えて来たンですか？と云う疑問が直ぐに蕩けて無くなるほど、深く、長い接吻(キス)。


「……これに懲りたら、巫山戯た言動は慎むンだな」

『は…い』


やっとの事で返した返答に、国木田さんが私の頭を撫でる。
国木田さん、好きです。
これ、期待…しても良いッて事ですよね…？


「あまり見つめるな」


そう言ってそっぽ向いた彼の耳が、真っ赤に染まっていたのは、私だけの内緒＿＿


ーーーーーー

国木田「強請(ねだ)るなら、頭を使え。評価だ、済めば…まぁ、何だ。…望むことをしてやる」

中原中也→←上司に恋しちゃ駄目ですか？〈番外編〉

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す