Non-STOP！【稲荷崎】 (ページ10)

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次の日。
職員室からどっさり資料を持って帰ると、また昨日と同じ金髪頭がすよすよと寝息をたてていた。

それも私の席で。

「侑く～ん、起きて」

「ンン…母さんあと五分」

「…」

ゆさゆさ揺すっても返ってくるのは間延びた声。
ついつい起こされると言ってしまいがちな言葉ランキングがあったら確実に一位であろうその言葉。
まあそんなランキングないけどね

それに私は侑くんのお母さんじゃありません

「ね、侑くん起きて…仕事出来ないから、お願い」

「うう、ン、…はぁい」

彼に優しく投げ掛ければ、あら素直。
子供っぽく返事した彼はぐぐ、と伸びをして私の隣の子の席に腰掛けた。

「も-、生徒会室の出入り禁止にするよ?」

「えー、せやかて会長の椅子めっちゃ昼寝に最適やもん。ズルいわこないなフッカフカの椅子…」

そんな調子で話していると、ふと廊下からどたばたと足音が聞こえた。
その音に侑くんは肩を跳ねさせてから、掃除用具入れの陰に隠れる。

何事？

そう思ったとき、「宮侑ー!!出てこい!!!」と、これまた大きな声。
確かあの声は体育教師の田原先生の声だ。

「………侑くんなにしたの」

「…え-？田原センセーの大人の絵本貸してもろただけよ」

掃除用具入れからひょっこり顔を出した彼は、手元のいやらしい雑誌をぱたぱたとさせ、にひひと笑った。

その表紙は明らかにハレンチなもので。

「…! たはらせんせ「静かに」

私が叫ぼうとした時、侑くんの手がその口を塞いだ。
そのまま抱き寄せられる形で「しゃべんなよ」なんて囁かれる。
まるで私が悪いことしたみたいじゃないか。

生徒会室の窓に先生の影が過ぎていく。
完全に見えなくなっては、侑くんはほっと息を吐いた。

「生徒会長は生徒の味方やないの？」

「それとこれとは別…!それよりそ、それ早くしまって」

「なに、頭エエ子は皆えっちや言うけど会長さんはちゃうんやなあ」

赤面の私にけらけら笑う彼。
やっぱり彼は意地悪で不純でどうしようもない人だ。

「なんや可愛いところもあるんやな」

「…馬鹿にしないで」

「ふは、褒めとんのに」

侑くんはどうしようもない人。
なのに。
なのに、この高鳴る胸はなんなのだろう。

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