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「大分暗くなっちゃったね、」
成瀬先生に資料を提出してから、私達は三年靴箱へと向かう。
外はもう薄暗くなっていて、綺麗な夏の星空が見える。
綺麗、と見詰めていたら
ふと、吹奏楽部の子たちだろうか、金管楽器を抱えた女の子達が廊下から歩いて来た。
「治先輩お疲れ様です!」
「治先輩、気を付けて帰って下さいね!」
「…ん、お前らも気ィつけて帰りや、」
「「はーい!」」
その子たちは宮くんのファンだったのだろう、きゃっきゃと挨拶をしてまた歩き始める。
宮くんも宮くんで、満更もなく、そう返しては、
「やっぱ人気者は大変やわ〜、」
なんて得意気に笑ってみせた。
それでも私は知っている、宮くんが人気なのは、イケメンもそうだろうが、全校をしっかり纏めれる人間なのに、どこか無気力を感じさせる所とご飯が好きな所とのギャップだということを。
それにバレー部のエース。
流石、人望が厚い。
そんな話をしながら、私達は靴箱に辿り着く。
私と宮くんは2組と4組だから、少し靴箱が離れてるんだけど。
「…お。」
ぱさり。
ふと、靴箱から上靴を取り出した宮くんの靴箱から一枚の便箋が落ちる。
白い便箋には、「治先輩へ、」なんて丸くて可愛い如何にも女の子の字。
これはもしかしなくても、
「宮くん!ラブレターじゃん、ラブレター!」
「そやな、」
興奮気味の私と違い、何処か素っ気ない宮くん。
やっぱりもう慣れっこなんだろうか。
それでも少女漫画みたいな展開に、恋愛ウブな私は盛り上がる。
女の子の夢だからね、
「きっと告白だよ!彼女できるかもね!」
私が彼の肩を叩き、楽しそうにそう述べた時。
不意に宮くんの綺麗な指が私の顎を掬って、顔が一気に近くなる、
それから、
「俺に、彼女が出来てもエエんか、」
「…え」
宮くんは酷く悲しそうな怒っている様な、何とも言えない瞳で私を射抜く。
そうして、私から手を離せば、
「まあもし彼女が出来たらめっちゃ自慢しちゃるさかい、精々悔しがりや、
ほら、帰ろ」
なんて何事も無かったかの様に笑って、私の手を引っ張った。
綺麗な星が瞬く中、隣を歩く彼の悲しそうな瞳が脳裏に焼き付いて離れなかった。
『俺に、彼女が出来てもエエんか、』
未だに、彼の伝えたかった事はわからない。
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作者名:わう。 | 作成日時:2018年8月18日 9時