Non-STOP！【稲荷崎】 (ページ8)

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侑くんが此処を出てから約30分。
ある程度仕事も終わったので、不意に疑問に思った事を彼に問う。

「侑くんと宮くんってどっちがお兄さんなの、？」

「ン、？…ああ、それ教えて貰ってないンよ、喧嘩するやろって。だって兄貴のがエエやん、」

面白い返答が返ってきた。
「因みに俺は自分のが早く生まれたと思てる、」なんて真顔の補足を添えて。
なんやかんやで普段落ち着いている彼も、片割れの侑くんには対抗心だったり子供っぽい態度を取ったりするんだと思うと、自然と頬が緩んだ。

「侑くん、真っ直ぐ帰ったのかな、」

「いや、喧嘩でもしとるンとちゃう」

宮くんは遠い目をしてそう述べれば、手元の資料の角をトントンと机の上で整える。
ぼう、と時計を見ている彼の首筋からたらりと汗が垂れて夏だなあ、なんて思ったり。

「ほら、終わったんやし、成瀬先生ンとこ行って帰ろや、

夏の光を後ろに浴びて、健康的に伸びるすらりとした手足に少し気だるげな顔。
その横顔は綺麗で、

……A、？」

「っわ、とと、御免！そだね、帰ろう」

「、？」

不思議そうに首を傾けた彼、誤魔化すように資料纏めては鞄をひっつかむ。
今思えば生徒会室の鍵は一般生徒は借りられない筈なのに、侑くんは何故生徒会室に居たのだろうか。

…軽くホラーだったりする。

「…A、」

不意に名前で呼ばれて振り返る。

大体彼が私を名前で呼ぶ時は何か彼と私の中でアクションが起こった時だ。
其処には意地悪気に笑った宮くんが居て。

「さっき、俺の事めっちゃ見よったやろ、」

「う、ぐ…、」

図星、だなんて。
恥ずかしくて言えない。

「…あ、ンま見んといてよ、

俺があんまりにイケメンやってもな、」

「ふは、何それ、」

「惚れンなよ、」なんて、決め顔を見せた彼の隣。
何時でも此処は私の立ち位置であって、この関係であることがとても幸せに思えた。

夏色が染み込んだ廊下を、二人うわついた足でゆっくりと歩く、そんな幸せの時間。

ずっと続けば良いのに、
なんて私は欲張りなんだろうな。