【d!】氷の海に沈む花 (ページ45)

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脈打つ箱・３ページ45

只事ではないAの様子に武藤は恐る恐る尋ねる。

「あのー申し訳ないんだけども、何が起こってるのか話してくれないかい？管理官と拳銃っていったい何のこと？」

その言葉に反応し顔を上げたAの顔を見て武藤はギョッとする。
かなり狼狽しているAだが、その目の奥には見たことのないエネルギーを感じた。
まるで、待ちに待ったクリスマスの朝を迎えたこどものような、恐ろしく純粋な期待。

「ごめんなさい、これは教えられない。」

「えー！？そんな勿体ぶってないでさー20年前の事件だよ？今更どうしたっていうんだよ。」

着信音が鳴り、Aが素早く反応した。
ショッピからの着信であるとわかると、ほんの少し眉をひそめるが通話に切り替える。

「もしもし、何かわかった？」

「Aさんこれどゆこと？拳銃庫から無断で一丁なくなってます。それと、管理官は毎週土曜はゴルフの打ちっぱなしに行ってるらしくて、場所までわかったんで電話しましたけど既に自分の車で出た後でした。あんた何に巻き込まれてるんです？」

「あとで話すわ。それよりデータベースで調べてほしい事件があるの。キーワードを文字で送るから、頼んだわ。」

言い終えるや否や通話を切り、バッグと上着を持って出かける準備をするAを武藤が引き留める。

「え、どこ行くのAちゃん！」

「え、なに？Aちゃんどうしたの？」

同じタイミングで風呂を終えたまどかがきょとんとした顔でリビングに戻ってくる。

「ごめん急用なの、行ってくるね。」

「マジで？もう夜なのに…まあいいけど。来月のバーゲンは絶対一緒に行くんだから、それまでにその捜査？仕事？わかんないけど、ちゃんと終わらせてよね。」

「…うん、わかった。」

Aは濡れたまどかの頭を優しく撫で、武藤にうっすらと微笑むとそのまま何も言わずに武藤家の玄関を出た。

ショッピから送られてきたばかりのファイルをすぐに確認する。
20年前の事件、発生日は今日と同じ日付。
まずい、Aの心臓がドキリと跳ねる。

もう一件頼んでいたことについてメッセージが入った。
それはコネシマの両親が眠る墓。
場所はここから少し距離がある。
間に合うだろうか。

カジュアルな服装とパンプスのため、いつものピンヒールよりは走りやすかった。
冷たい冬の夜風はAの顔に刃を突き立てる。
大きな交差点で信号に阻まれ、Aは息を切らしながら辺りを見回す。
その横で急ブレーキをかける車があった。