正義の線・３ ページ22
それでも、10歳離れたまどかと買い物にいく楽しそうな笑顔や、武藤とまどかの口喧嘩を遠くから見守る少し寂し気な表情は本物だと信じている。
「あれ？まだぽちぽちやってたんすか。」
「おーショッピくん。なんや手伝ってくれよ元々君の仕事なんやし。」
「あーーやるかあ。」
ショッピは大人しくキーボードを打ち始めた。
「あーーマジでムカつく。あんなんと一緒に行動したら台無しやん。」
「あはは、まだ言ってんのか。」
「せっかく俺が時間かけて理想の女に育ててきたってのに。」
「え？はあ？」
衝撃的な発言に武藤は慌ててショッピを見る。
ショッピは能面のような顔を武藤に向けた。
「気が強くて反抗的で危なっかしいけど、俺のことは甘やかしてくれる最高の女。めっちゃ時間かけて気づかれんように髪型から靴の形まで俺好みにしとったんやけどな〜。」
「ど、どういうこと？何の話？」
「だから、Aさん育成計画の話っすよ。」
武藤は血の気が失せるような感覚をおぼえる。
目の前のショッピが得体の知れない存在のように思えた。
「一体どういうことや。Aちゃんにおまえが何したって言うんだ。」
立ち上がった武藤はショッピの胸ぐらを掴み上げる。
相変わらずの無表情を貫くショッピは、同情するような眼差しを武藤に向けた。
「Aさん、すぐ死んじゃいそうだったんで。実際死に場所探すために警察官なったんやろ？
過去に何があったかは俺は知らんけど、俺は死んで欲しくなかったから『死なない女刑事』のフラグを懇切丁寧に立ててたんです。」
その目にはなんとも言い難い愛情深さが宿っていて、武藤はショッピから手を離した。
「恋人作ったら死にそうな匂いしたからセコムしとったし、頼られるほど強くなる人やから犬ムーブしてくっついとった。」
「ええ！？あれそういうことだったの？」
「すべてはAさんに自分は『死なない女刑事』だってことを植え付けるための洗脳です。」
武藤はくらりと椅子に倒れ込む。
ショッピくん、恐ろしい子や。
「そのついでに俺好みの女に育てて、あと俺に弱く依存するようにし向けて、将来出世したら俺のもんにしようと思ってます。」
マジで恐ろしい子や。
呆気にとられてショッピを見ていると、ショッピは思い出したように唇を噛んだ。
「コネシマに影響を受けたAさんが自分を犠牲にする快感に気づいたら最悪や。すぐ死んじゃいます。Aさんに何かあったら武藤さんのせいです。」
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作者名：サハラ | 作成日時：2022年1月6日 12時
