″もしも″の六 ページ6
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音、太陽の音。
昼間の音。
太陽の光を見たのは小さい頃に一度だけだから。
私にとって太陽とは暗闇に聞こえる音だった。
羨ましさで潰れちゃいそうだから、布団を頭から引っ被って寝たフリ聞こえないフリ。
どうしても悲しくなる時は、何度も何度も読み返したあのお気に入りの本を読もう。
ロウソクの火を頼りに、空想の世界へ。
そんな日常。
誰に暴力を振るわれる訳でも無いし、ご飯だってちゃんと貰える。
読みすぎて黄ばんでしまった紙が、擦れて爆ぜたような音を立てた。
不自由はあるけど、そこまでじゃない。
むしろ何もしないでご飯の食べられる高待遇とも言えるのだろう。
…あの人は、もう目を覚ましただろうか。
今夜もう一度あそこに行ってみよう。
おにぎりと水筒と救急箱をもって。
化け物に介抱されるのは嫌かもしれないけれど、命あっての物種と言うしね。
…何だか疲れたな。
まだ昼間だけれど寝てしまおうか。
どうせ夜動くんだから、いいよね。
本を閉じて棚に戻す。
ロウソクを吹き消して、真っ暗。
布団を被って目をつぶった。
日の元を望む私だけれども、長い間暗闇にいるとやっぱり落ち着くのは夜の方。
不本意だけど私は夜の存在だと認めざるおえない。
「呪いの忌み子…か」
ご先祖さまもご先祖さまだ。
鬼なんて退治しなければ…
そもそもその人も山姥に育てられてるんだからもっと慈悲の心を…
ダメだ、思考がまとまらない。
落ちてゆく落ちてゆく。
おやすみ、世界。
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レイレイン - 素敵な話ですね。とても感動しました。ありがとうございます。 (2021年4月19日 20時) (レス) id: 5a04a92c31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2019年4月1日 16時